2004 Fiscal Year Annual Research Report
宗教説話集『ハラ・チャリタ・チンターマニ』成立の背景-所収説話の原拠を求めて-
Project/Area Number |
15720079
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴崎 麻穂 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (30342679)
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Keywords | Haracaritacintamani / Jayadratha / Brhatkatha |
Research Abstract |
13世紀にカシミールで作成された宗教的説話集Jayadratha作『ハラ・チャリタ・チンターマニ』(Haracaritacintamani、以下HCC)は、シヴァ神にまつわる神話・伝説、そしてカシミールの聖地の故事来歴を語る物語で構成されている。現存資料は第32話の途中までが収録されているが、前書きの全体構成の解説をもとに試算すると、本来は37話であったと考えられる。本研究は、HCCが執筆された時点でどのような資料が参照されたのか、所収説話のパラレル分析によって解明することを目指している。中でも関係資料のひとつと考えられる、インド古代説話集Brhatkatha(以下BK、2〜4世紀?、原本は散逸)の諸伝本がどの程度利用されたのか、を中心にHCCを構成する物語と並行話の比較分析という方法論を用いて、HCC成立に寄与した諸文献について調査する。 そこで、本年度も昨年度と同様に(1)関連文献・資料の調査と収集、(2)『ハラ・チャリタ・チンターマニ』(以下HCC)の解読、(3)HCCの現存テキストの電子化、の3種の研究を行った。 まず(1)では研究書や図書カタログ、Webでの書籍調査を引き続き行いながら、必要資料の収集を行った。特に、昨年度入手し得なかったインド(プーナ)の写本については、現地の研究者の協力を得て、二月に新たに一写本を入手した。(2)では、昨年度行ったHCCの分類のうちのb群の物語(もともとシヴァ神話とは直接関わりのない物語)を中心に、現在唯一の刊本であるKavyamala版テキストと昨年度十二月に収集した一写本とを対照しつつ、テキスト分析を進めた。さらに、本年度2月には、インドのバンダルカル研究所より新たに一写本を入手したので、現在その写本資料を対照しながら、さらに異読調査を進行中である。 (3)では、昨年度に引き続き、テキストの解読と同時に、HCCのテキストの電子化・データ化を進めている。
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