2005 Fiscal Year Annual Research Report
ウェールズ語を範とするアイヌ語復興のための学習教材開発
Project/Area Number |
15720081
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
井筒 勝信 北海道教育大学, 教育学部旭川校, 助教授 (70322865)
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Keywords | アイヌ語 / 言語学習・言語教育 / 言語の復興と再活性化 / 認知言語学 / 機能主義言語学 / 辞典 / 構文 / ウェールズ語 |
Research Abstract |
本研究は、かつて経験した消滅の危機から大きな復興を遂げたウェールズ語での研究と実践を手本にして、それ以上に深刻な危機を迎えているアイヌ語の復興と再活性化のための具体的な言語学的方策を模索すべく企図された。一年目にアイヌ語の現状とその背景を把握し、二年目にウェールズ語復興のためになされた実践とその成果を調査し、三年目にはそれらの知見を基にして真に有効なアイヌ語学習教材の開発を目指すという計画を立てた。 一年目と二年目になされた調査からアイヌ語の復興と再活性化に必要な具体的な言語学的方策ぶ明確になったため、三年目である本年度は、それに従って、当初目指した「アイヌ語学習教材の開発」に留まらず、その運用に必要な「学習と指導の手引き」も作成することを目標とした。具体的な計画内容は、(1)初等教育で語彙学習に有効な「単語カード」の作成並びに「指遊び」や「手遊び」の考案;(2)中等教育で利用可能な教科書、学習辞典の作成;(3)学校教育並びに社会教育・生涯教育においてアイヌ語教育を実現する上で必要となる「学習と指導の手引き」の作成の3点である。 計画は、ほぼ全てが達成された。8月までに指遊びや手遊びのゲームを考案し、更に11月までには単語カードを試作した。また、中等・高等教育の語学の授業で利用可能な教科書と学習辞典の合本として『基礎アイヌ語』(刊行予定)を作成した。1月、大学でこの教科書を用いた集中講義「アイヌ語入門」を開講、小学校の総合的学習の時間及び公民館活動でカードゲーム、指遊び、手遊びの試験運用を実施した。その結果、試作段階で不明確だった学習教材の利点と欠点が明確になり、また学校教育の現場でより利用し易くするための工夫について多くの知見を得ることが出来た。以上により、(1)と(2)の計画は実行された。 (3)の計画に関しては、一年目に作成した英語版の報告書を出発点に新たな文献調査を行い、アイヌ語の語彙、文法、言語地理、言語史、言語政策、教育について概観する「学習と指導の手引き」を報告書(11.研究発表の「図書」所収の『I/YAY-PAKASNU:アイヌ語の学習と教育のために』)としてまとめた。
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Research Products
(4 results)