2003 Fiscal Year Annual Research Report
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15720083
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐々木 勲人 筑波大学, 現代語・現代文化学系, 助教授 (40250998)
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Keywords | 客家語 / ヴォイス / 受動構文 / 受益構文 / 使役構文 / 〓語 / 呉語 / 粤語 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は大きく2つに分けられる。一つは,中国東南方言の一つである客家語文法の記述的研究である。すでに出版した『東南方言比較文法研究-寧波語・福州語・厦門語の分析-』(好文出版,2002年)の中で取り上げた31の文法項目について,インフォーマントの協力を得ながら各項目の例文を客家語に置き換える調査を行った。この調査を通して明らかとなった客家語に固有の文法現象について分析を行うとともに,寧波語,福州語,厦門語における当該文法項目の再検討を行った。調査結果は現在整理中であるが、資料的価値も高いと思われるので,早期に発表したいと考えている。 もう一つの成果は,ヴォイスに関する中国東南方言の比較対照研究である。受動構文や使役構文,受益構文などヴォイスと呼ばれる文法領域に関して,呉語,〓語,客家語,粤語の4つの方言を集中的に調査し,共通点と相違点を明らかにした。とりわけ,前置詞型の受益構文について,表現可能な受益状況の限界や他構文との関連の解明を通して,動詞から受益前置詞へと派生していく文法化のプロセスを明らかにした。呉語や〓語に見られる受益構文と処置構文の関連が,客家語や粤語ではまったく見られないことから,中国東南方言の前置詞型受益構文には異なる2つの類型があることを指摘した。またこれに関連して,受益構文から使役構文へと派生するプロセスには,4つの方言に共通性が見られることを指摘し,そのことが東南方言で多く見られる授与動詞を用いた受動構文の成立に大きく関与していることを指摘した。
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