2003 Fiscal Year Annual Research Report
『全国方言文法辞典』のための諸方言の文法に関する記述的研究
Project/Area Number |
15720101
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
日高 水穂 秋田大学, 教育文化学部, 助教授 (80292358)
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Keywords | 東北方言 / 格表現 / 原因・理由表現 / 推量表現 / 文法化 / 地域差 / 日本海沿岸地域 / 方言文法 |
Research Abstract |
本年度は、上記の研究課題を達成するために,以下の調査を行った。 (1)東日本日本海沿岸地域における方言実地調査 長野県下水内郡栄村小赤沢(秋山郷)、秋田県由利郡矢島町、青森県弘前市において、主に、原因・理由表現、推量表現について、調査を実施した。東日本の日本海沿岸地域では、原因・理由表現としてサカイ類の表現が用いられ、推量表現として指定辞(断定の助動詞)活用語尾に由来する形(ダロウ・デロ・ロ等)が用いられている。これは、近畿地方から北陸・新潟・山形県庄内地方・秋田県由利地方にかけて連続的に分布するものであるが、これらの表現を地域ごとに比較すると、近畿・北陸地方では形態的にも用法の上でも語の本来の出自が維持される傾向があるのに対し、新潟以北になると形態的にも用法の上でもより単純化した性質を持つ傾向が認められる。すなわち、中央部よりも周辺部において「文法化」の現象がより進行していると言える。これらの調査の結果を踏まえ、論文「北日本の日本海沿岸地域に見られる文法体系の単純化現象」(真田信治監修『日本海沿岸の地域特性とことば』桂書房、2004年3月刊行予定)をまとめた。 (2)方言文字化資料の用例分析 方言の語りを文字化した昔話集をテキストとし、格助詞の用例を採集した。そのうち、東日本方言で用いられる、目的語を表す格助詞コト・トコ類について分析したところ、太平洋側の地域では形態的にも用法の上でも名詞「こと」の意味が維持されているのに対し、日本海側の地域では名詞的な性質が希薄化し、目的語を表す汎用の格助詞として多用されるようになっていることが、数量的にも確認された。この分析結果を、論文「格助詞相当形式コト・トコ類の文法化の地域差」(『社会言語科学』7巻1号、2004年7月刊行予定)にまとめた。
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Research Products
(2 results)