2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15720109
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三好 暢博 東北大学, 大学院・文学研究科, 助手 (30344633)
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Keywords | 生成文法 / 比較統語論 / フェイズ / 極小主義 / 局所条件 / 名詞句移動 / フェイズ不可侵性条件 / 否定の属格 |
Research Abstract |
本研究の目的は、相対的最小条件タイプの移動に課せられる条件を理論から取り除くことができるか否かを経験的に問うことにある。本年度は、(1)ロシア語における長距離の依存関係が関与する否定の属格の分布と(2)二重目的語構文における受動化の比較統語研究に従事した。特筆すべき詳細は以下にのベるが、おおむね当切の予測に近い結果が得られた。 (1)否定の属格の分布に関しては、同一のフェイズ内での相対的最小条件の効果が消失するという事実が得られた点で予測通りの結果となったが、課題も残る。Franks(1982)の論文に依拠した形での量化の属格現象を構造格と内在格(語彙格)とを区別するテストとして用いるべきではないことが判明した。(インフォーマントの指摘により、全ての形態論的パラダイムを調べた際に形態融合に関するコントロールがなされていないことが明らかになった。)したがって、受動化の現象に頼らざるを得なくなった。別のテストも、議論を補強するために必要である点が問題として残っている。 (2)またWoolfood(1993)等で観察されている対称的受動化といわれている現象は明らかに相対的最小条件タイプの移動に課せられる条件を理論から取り除くべきであると示唆しているが、対称的受動化を許さない言語も数多く存在する。したがって単に相対的最小条件タイプの移動に課せられる条件を取り除くだけでは結論として不十分で、本当の論点は対称的受動化に関する言語の差異をどのようにして捉えるかということになる。現段階では、フェイズにもparametric variationがあるというラインで考察を進めているが、対称的受動化以外の現象からの証拠に乏しい。次年度はこの点も追求したい。
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