2004 Fiscal Year Annual Research Report
「欽定憲法」に関する歴史認識の形成と定着に関する歴史的研究
Project/Area Number |
15720143
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川口 暁弘 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (80327311)
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Keywords | 欽定憲法 / 憲法思想 / 憲法制定 / 明治憲法 / 自由民権 |
Research Abstract |
「欽定憲法」に関する歴史認識の形成と定着に関する歴史的研究と題して、帝国憲法下の憲法観を解明することが本研究の目的である。この研究によって、従来の、憲法学者の学説を紹介することに終始してきた日本憲法思想史は、新しい研究段階に進歩する。 歴史認識としての欽定憲法観は(1)明治天皇の主体性強調、(2)その裏返しとして伊藤博文らの従属性強調ないしは役割の矮小化、(3)天皇と臣民が平和的関係の裡に憲法制定を行ったこと(4)憲法制定・議会開設は明治維新完成=第二維新であること、等の意想を構成要素とする。この四条件の形成と定着を政府と民間の両面から考察する。かかる歴史認識は一般に政府と民間の合作によって作られ、それによって初めて定着するものと考えるからである。 平成16年度は、論文全体の構想をほぼ固めることが出来た。平成17年度から執筆にはいる。他方、これと同時に、上記四条件のうち(1)から(3)について憲法制定前の政治状況を論文にまとめた。つまり明治18年から明治21年の政治史を研究したのである。これは本研究の主旨にてらせば、あくまで前半部分に過ぎないが、400字詰原稿用紙換算800枚程度の分量となった。 従来この時代の研究は、伊藤博文や井上毅の憲法構想の解明に寄与してきたが、複数の異なる憲法構想の間での調整が何故、如何にして行われたのか、その理由を解明できないで居た。本論考はこれらの調整が、条約改正問題、三大事件建白運動などへの対処の一環として行われたことを論証した。この作業によって、上記(3)と(4)の意想が政府からではなくて、むしろ民権派の側から提示された歴史的背景が明瞭に理解できることとなった。なお細部の修正を施して平成17年夏期に脱稿する。
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