2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15720158
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 真 筑波大学, 歴史・人類学系, 講師 (20316681)
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Keywords | 中国国民政府 / 農業政策 / 土地政策 / 土地改革 |
Research Abstract |
研究の実施項目とその内容 (1)「日中戦争時期、西北地区における水利灌漑建設と「自作農創設」に関する研究」 本研究では日中戦争時期に水利灌漑設備の建設とその完成後の「自作農創設」が、複合的に試みられた甘粛省湟恵渠灌漑区の事例を検討する。戦時期の甘粛省では、農業水利の整備が精力的に推し進められた。しかし、土地生産力の向上は、土地投機による地権の集中を不可避とした。そこで、湟恵渠灌漑区では、水利灌漑設備の建設と「自作農創設」の実施とが、同時に追求されるべき複合的な課題として位置付けられた。本研究では、戦時期に国民政府が西北地区の経済建設を重視したという政治的背景にも留意しつつ、甘粛省湟恵渠灌漑区における土地政策の理念と実態を明らかにした。 (2)「中華民国期、福建省西部における土地問題と国家に関する研究」 福建省龍巖県は1920年代末から30年代初頭にかけて共産党根拠地の一部となった。またその後、国民党内では蒋介石系中央政府と一線を画す国民革命軍第十九路軍が同地区を占領すると、「計口授田」(人口割での土地分配)を実施した。このため、旧来の土地権利関係や小作制度が徹底的に破壊され、国民政府中央が龍巖県の統治を回復してからも、土地の権利や小作料納入をめぐる紛糾が長く続き、田賦の徴収も困難を極めた。こうした錯綜した土地権利関係を一旦白紙に戻し、政府の管理の下で土地秩序を回復するために、龍巖県における「自作農創設」が実施された。本研究では国民党と共産党による闘争の場となったという歴史的背景の下で、複雑な土地・小作問題が形成された龍巖県の社会状況にも注意を払いながら、国民政府による土地政策の実施状況を考察する。
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