2003 Fiscal Year Annual Research Report
近代ヨーロッパにおける都市個性の変容に関する史的分析〜ボルドー史研究序説〜
Project/Area Number |
15720175
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野村 啓介 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 助教授 (00305103)
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Keywords | ボルドー / 貿易商人(ネゴシアン) / ワイン / ボルドー商業会議所 / 国際商業 / 国際ネットワーク / 都市指導層 / 都市のアイデンティティ |
Research Abstract |
本研究の目的は,変革の時代における国際商業都市ボルドーを考察するにあたり,経済指標の変遷に着目する従来の「量的」観点ではなく、「質的」規定要因であると考えられる観点を重視すること,すなわち「都市指導層(都市エリート)」・「ワイン商業」・「商人の国際ネットワーク」という諸領域での再構造化を把握することである。今年度はその具体的作業として,ボルドー商業会議所メンバーのプロソポグラフィー分析に着手し,都市指導層における貿易商人の位置づけの変化,ないし貿易商人間の勢力分布の変遷を把握し,ボルドー都市指導層の政治社会的構造の変容とその歴史的特質を解明することにつとめた。 作業日程は次のとおりである。まず,4〜7月にかけて,ボルドー史関連図書の入手と読解をおこない,研究史的問題の把握につとめた。次に、夏季休業期間を利用して,主としてジロンド県文書館,ボルドー市立文書館,ボルドー商工会議所におもむき,ボルドー商業会議所・ジロンド県会・ボルドー市会などの19世紀をつうじた主要機関構成員についての史料を収集した。滞在期間が3週間しかとれなかったため,目的の史料をすべて収集できたわけではないが,県当局がボルドー都市指導層の政治力・経済力を把握するために作成した報告書をはじめとして,質量ともにプロソポグラフィー分析に必要な最低限のものを揃えることができた。10月以降は,こうして収集した史料の解読作業に費やされた。この間,東京大その他での史資料収集と研究打ち合わせをおこない,同時に論文執筆を並行しておこなった。 今年度の成果は,史料分析から,世紀半ばのボルドー商業界の中に政治的・経済的に対立する二大陣営の存在を明らかにできたことである。従来,19世紀をつうじてのボルドー商人層の一体性が強調されていたことを想起すれば,この分析結果は研究史的に大きな意味をもつ。この対立が上記の「再構造化」といかに関連していたかについては,さらに研究を継続中である。今年度の成果は,近く論文として公表されることになっている。
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Research Products
(1 results)