2003 Fiscal Year Annual Research Report
出土木製品の用材選択に関する基礎研究―建築部材を中心とした樹種と木取り―
Project/Area Number |
15720189
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Research Institution | (財)元興寺文化財研究所 |
Principal Investigator |
木澤 直子 財団法人 元興寺文化財研究所, その他の部局等, 研究員 (50270773)
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Keywords | 建築部材 / 樹種 / 木取り |
Research Abstract |
今年度は主に近畿地方(大阪府・奈良県・兵庫県・和歌山県・京都府)を対象に調査を行った。 1、調査内容 ・これまでに(財)元興寺文化財研究所において行った樹種同定結果のうち近畿地方のデータ約7,000点について出土年代および出土遺構を再調査し、整理を行った。 ・各部材の形態を確認し建築部材として分類し得る資料であるか否かの再検討を行った ・上記資料のうち、可能なものについては木取りについて調査を行った ・建築部材の使用樹種の傾向を把握するために、自然木、杭、農具、服飾具等、他器種の樹種についても調査を行った 2、調査結果 ・上記資料約7,000点中、出土遺構が明らかであり、年代の帰属を限定しうる資料として建物遺構の柱穴より出士した柱材約90点を抽出することができた。資料は弥生時代、古墳時代、古代、中世の各期に属しこのうち弥生時代の資料は全体の7割と最も多い。使用樹種の傾向を見ると、弥生時代には広葉樹の中でもブナ科の材が多く用いられるのに対し古墳時代にはヒノキ・コウヤマキなどの針葉樹が各地域で見られるようになり、古代以降明らかに針葉樹へと以降していく傾向を確認することができた ・抽出したデータはいずれも掘立柱建物と竪穴建物に伴う柱根であった。建物規模と樹種との関連性については何等かの傾向を得るに至らなかったが、次年度の調査を行うなかで資料数を増やし更に検討する予定である ・柱材はいずれも芯持材であった。一方、扉材、梯子など(弥生時代・古墳時代)は針葉樹板目材を多く用いる傾向を得た ・建築部材の使用樹種について他の器種との比較を行った結果、弥生時代・古墳時代においては自然木と杭の使用樹種と類似した傾向にあることを確認した。古代以降、建築部材は各地域において概ね針葉樹(スギ、ヒノキ、モミ等)へと移行するのに対し、杭はマツ科を中心とした針葉樹とブナ科以外の広葉樹を多く用いる傾向にあり、こうした状況は自然木に類似する。このことから、近畿地方においては建築部材の用材として弥生時代、古墳時代には手近に植生し入手が容易な材を用い、古代以降特定の針葉樹を選択して用いる傾向にあることが明らかとなった。
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