2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15720208
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鈴木 慎一郎 信州大学, 人文学部, 助教授 (80303436)
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Keywords | 文化人類学 / グローバル化 / ナショナリズム / 観光 / ポピュラー文化 / ジャマイカ |
Research Abstract |
日本国内で演出・消費されているカリブ海地域起源の民族文化のうち、クラスやワークショップなどのいわゆる「習い事」の形式を取っていることが多いのは、東カリブ海英語圏で盛んなスティールパン音楽、ジャマイカのレゲエ音楽に付随したダンス、キューバやプエルト・リコのサルサ音楽に付随したダンス、さらにジャマイカのジャーク・チキン料理などである。これらに対応する形で、カリブ海諸国の観光産業においては、こうした文化を日本や欧米からの観光客にやはりワークショップ形式で実体験させるというやり方が、定着している。レゲエ・ダンス、サルサ・ダンスについて特記すれば、日本においてこれらはダンス一般の中でそれぞれ固有のジャンルとして認知されつつあり、ダンス専門雑誌においても一定の紙面が割かれている。また、それらを実践するのは男性より女性の割合が高い。異文化の演出・消費を通じ、当事者たちの自文化観と異文化観はどのように構成されるあるいは変容するか、という問題について、日本のレゲエ文化(ここでは音楽とダンスを含む)を例に現段階で指摘できる傾向を挙げる。第1に、世界で起きていることについて同時代のジャマイカのレゲエ文化と同様の問題意識を抱きつつ、それを日本社会というローカルな文脈に当てはめていこうという傾向。特にジェンダーやセクシュアリティの問題の前景化は、日本のレゲエ・ファンによっても内側からリアルに「生きられた」ものになっている。第2にどちらかといえば男性のファンの間で顕著な、「日本らしさ」への誇り。「日本のレゲエ」はジャマイカのそれの模倣でなくてすでに自律した統一体である、とする語りは一般的なものになりつつある。第3に、上記の2つとしばしば矛盾しつつ混在している傾向として、レゲエ文化を特定の地域や国とは無関係の世界的な若者文化として消費する傾向がある。
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Research Products
(1 results)