2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730004
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大屋 雄裕 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (00292813)
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Keywords | 法哲学 / 情報化社会 / 法情報学 / 公共性論 / 公的言説 |
Research Abstract |
ネットワーク上の言説とそれをコントロールするための技術に関し、実際に発生している問題例及び裁判例(日本・アメリカ)を収集し、分析した。また、求められるべき公的言説の性質を解明するための理論的研究を行なった。 理論的研究については、(1)法哲学において公共的価値を持つ言説がどのような性質を持つべきものと位置づけられてきたか《公共性論》、情報化に伴う問題に従来の法律学がどのような対処を試みてきたか《法情報学》の二点を主な対象とした。 成果としては、特に名誉毀損的・プライバシー侵害的な言説について保護対象をどのように定めるべきかという問題に関し、純粋な主観説・客観説ともに問題があるため採用しがたく、言論の自由などの憲法的価値とのバランスを考慮したうえで公人理論など別種の基準との組み合わせを志向すべきであるという結論が得られた。その際、純粋主観説の問題点を整理するにあたっては倫理学及び法哲学的な規範理論の知見を応用したのみならず、現実に生じつつある社会変化との関係を論じている点に独自性が認められる。 また、公的に許容される言説の限界が画された場合にはそれを(究極的には)強制的に実現するための手段として国家権力の実効性が最終的に担保されることが重要であるが、そこで登場する権力の動作環境に対して社会の情報化がいかなる影響を及ぼすかの分析が重要な課題として浮上した。今後は効率的で公正なコミュニケーションのあり方に関する経営学の知見を調査するとともに、この問題に関する理論的研究を継続したい。
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