2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730017
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
森 稔樹 大東文化大学, 法学部, 助教授 (10295157)
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Keywords | 行政手続オンライン化法 / (行政)文書 / 電子申請(電子申告) / 住民基本台帳ネットワーク / e-democracy / 情報公開 / 個人情報保護(法) / 電子署名 |
Research Abstract |
2004年4月に、代表者が大分大学教育福祉科学部から大東文化大学法学部に移籍し、研究環境および教育環境が大幅に変わったことなどから、本年度も研究業績を発表するまでには至らなかった。これは遺憾なことであり、最終年となる2005年度以降には、これまでの研究成果を公表できるよう、努力したい。 いわゆるe-Japan計画以来、(ITバブルの崩壊により、一時期ほど声高に唱えられなくなったが)電子政府・電子自治体構想は着実に進みつつある。しかし、実際のところ、行政手続の電子化が進められたところで、これまでの行政法理論が大幅に変わるという訳ではない。むしろ、いわゆる行政手続オンライン化法が、電子計算機による文書を行政文書などとして扱うとしたことにより、かなりの割合で法的問題が解決されている。電子化による問題は、むしろ、紙による手続には存在しえない(あるいは増加した)リスクの法的問題を検証すべき段階に来ている(例、岐阜県可児市において機械の故障により投票データの異常という事件が生じ、これについて、名古屋高等裁判所が選挙を無効とする判決を出している)。そればかりでなく、住民基本台帳ネットワークの発展に欠かせないとされている住基カードの普及率が非常に低く、住民票コードの利用なども、予想されていたほどには進んでいない。これには、個人情報保護に関する疑念が根深く残っているという理由よりも、むしろ、電子政府・電子自治体の推進がいかなる目的のために進められるのか、いかなる行政スタイル、そして社会構造を目指すのかという根本的背景が十分に練られていないことにあるものと思われる。既に何度も指摘されているように、電子化を進めることは、場合によってはかえって複雑さを増し、時間や資源の浪費につながりかねない。こうしたことを念頭において、オルタネイティヴを視野に入れた研究を仕上げることを考えている。
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