2003 Fiscal Year Annual Research Report
国際的な環境アセスメント制度の研究―国際法の国内的実施に関する手続的規制の意義―
Project/Area Number |
15730024
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
南 諭子 津田塾大学, 学芸学部・国際関係学科, 助教授 (00305864)
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Keywords | 環境アセスメント / 国際環境法 / 国家環境政策法 / 域外適用 / エスポー条約 |
Research Abstract |
本年度は、主に国際的な環境アセスメント制度に関する国家実行の検討を行った。 米国に関しては国家環境政策法(NEPA)の分析を中心に行った。国際的な環境アセスメント制度の登場以前から、NEPAについてはその域外適用が議論の対象となってきた。当初、域外行為に関する適用可能性は否定される傾向にあったが、近年では積極的な動きも見られる。第一に、環境アセスメントを規定する国際条約に加入するために、NEPAの内容を国際的な文脈で実施する立法がなされることがある。第二に、判例の傾向としては、一方で他国主権の尊重といった観点から域外行為に関する適用が否定されることが多いといえるが、他方でNEPAが、連邦政府の意思決定の「プロセス」を規律するものであるために、域外行為への米国法適用に関する一般的な判例とは異なった議論が可能であるとされることがある(この点については次年度の初めに学会報告を行う予定)。 欧州諸国については、国際ルールの状況を整理した(エスポー条約・EU指令いずれについても戦略的環境アセスメントに関する新たなルールが採択されている)うえで、締約国会議の資料やEUの実施報告書に基づいて、国家実行を概観し具体的実施における問題点を整理した。なお、国内法の視点からの議論もある程度なされていることが判明したため、各国に関する詳しい分析は、国内法制度への影響(平成17年度の課題)も含めて平成16年度に行う予定である。 国家実行の検討と平行して、国際ルールの進展及び国際環境法における議論の状況も整理した。そこでは、事前防止に関する具体的な(かつ手続的な)義務という位置づけに対して疑問を提示する見解もあらわれている。また、国際判例として核実験再審請求事件及びMOX加工工場事件を検討した結果、アセス義務の位置づけについては予防原則や差止訴訟のあり方といった論点の検討も重要であることが明らかになった。
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