2003 Fiscal Year Annual Research Report
高失業下での自治体雇用政策と年金改革に関する日独実態調査研究
Project/Area Number |
15730028
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
上田 真理 福島大学, 行政社会学部, 助教授 (20282254)
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Keywords | 失業 / 低賃金雇用 / 最低生活保障 / 年金 / 公正な賃金 |
Research Abstract |
ドイツでは失業者の半減という政策目標を掲げ、「ハルツ委員会報告書」(2003年8月)を提出し、労働市場改革、社会保障改革、税制改革にわたる包括的な法律改正が急速にすすめられた。本研究に密接に関連しているのは、第1に、失業時の所得保障を担う雇用保険法の変更である。これは、失業手当の受給期間の短縮のみならず、失業扶助という雇用保険法の給付を廃止して公的扶助法による社会扶助と統合し、新しい給付(「失業手当II」)を導入することを内容としている。第2に、要扶助失業者に包括的に生活保障を担ってきた社会扶助法のなかから、稼働能力のある要扶助者に対して独立した最低生活保障法を社会法典2編として制定することである(2003年12月19日連邦議会と連邦参議院で法案採択)。このような急展開をみせるドイツ社会保障法の再編過程は、今後の研究成果を踏まえて評価せざるを得ないが、ただ今年度のドイツ聞き取り調査から次のことが確認できた。第1に、従来の包括的な最低生活保障法である社会扶助法から、「就労可能な人」とそうでない人を区分したカテゴリー別の最低生活保障法をはじめて導入したことは大きな変更である。第2に、しかしながら、不安定雇用といわれる「低賃金雇用」を失業者に創出することは必ずしもすすんでいない。これは、社会保険に加入できない低賃金雇用者は、就労していてもドイツでは「失業者」であり、稼働能力のあるものに対しても最低生活水準を下回る場合には公的扶助法が適用されることによる。日本の社会保障法研究が学ぶべき課題がここにある。第3に、賃金で生活ができない労働者に対して、「公正な賃金」ないし「適切な(最低)賃金」の保障と並んで、就労期の後に到来する高齢期の年金の低額化への対応は、平等原則の観点からあらためて論じられつつある。本研究を通じて「労働法と被用者保険法による平等原則の実現可能性」を論じる基盤が築けたものと確信している。
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Research Products
(1 results)