2003 Fiscal Year Annual Research Report
医療保障法の日英比較研究―個人・社会・国家の役割と責任について
Project/Area Number |
15730029
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
国京 則幸 静岡大学, 人文学部, 助教授 (10303520)
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Keywords | 若者 / 医療保険 / 国保 |
Research Abstract |
今年度は、現在提示されている医療・医療保障制度改革の論議について検討を行った。 平成14年の健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条2項を受けて提示された「基本方針」(平成15年3月閣議決定)は、(1)保険者の統合および再編を含む医療保険制度の体系のあり方、(2)新しい高齢者医療制度の創設、(3)診療報酬の体系の見直し、等について検討するものの、やはり財政を念頭においた議論に終始している。たとえば、保険者の再編統合という点を見てみると、規模の利益による財政基盤の安定化という方向性があらためて強調されている。しかし、保険者機能の発揮という点から考えてみると、医療保険は、同じ社会保険システムを採る年金保険などと比べても、規模の利益による恩恵を受ける度合が少ない。というのも、診療報酬の審査業務は、地域に密着した医療、特に医療と福祉の有機的連携を踏まえたきめ細かなサービス提供を志向すればするほど、大量の事務処理を行うこととは相容れなくなってくるからである。このようにあり方については、さらなる検討の余地がある。また、さらに、これらの問題を考えていく中で、改革論議の前提として考えなければならない問題があることが明らかになった。それは、医療保障の要となる国保を「取り巻く環境」が大きく変化し、現在国保が直面している困難な状況に拍車をかけることになっている点である。特に、フリーターやパラサイトシングルという言葉に象徴されるような、若者をめぐる状況の変化である。これまで社会保障を担っていく者として比較的楽観的に考えられてきた「若者」自身が大きな社会的問題に直面することになっており、このことが社会保障にも少なからぬ影響を与えてきている。制度や財政の問題とあわせて、若者の意識の変化(個人)=制度の前提の変化の有無、その原因、そしてあらためて制度のしくみについてあり方を考えていかねばならない。
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