2004 Fiscal Year Annual Research Report
医療保障法の日英比較研究-個人・社会・国家の役割と責任について-
Project/Area Number |
15730029
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
国京 則幸 静岡大学, 人文学部, 助教授 (10303520)
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Keywords | 若者 / 医療保険 / 社会的排除 |
Research Abstract |
医療保障を「取り巻く環境の変化」を視野に納める必要性から、本年度は、「若者」という観点で主として日本の医療保障制度(医療保障各種制度)について検討を加えた。 現在、社会学の領域で多くの若者研究の成果が発表されるに至っている。そこでは、若者が大人になる移行期の問題を中心に分析を行い、若者が自立する機会を逃しそれと相まって学歴や就業機会などの諸条件によって二層化、二極分化し、貧困化する可能性が指摘されている。見方を変えれば、「若者」は相対的に「リスクの大きい」社会をこれから生き抜かねばならないことを意味している。そこであらためて、自立することの意味(「自立」は「自由」と同じか、何をもって自立したと考えるのか、など)や、その方法、影響などについて検討しなければならない。 フリーターやニート・失業者など不安定な地位にとどまらざるをえなくなっている若者が増え続ける中で、日本の現行医療保障制度を考えるとき、たとえば、健保における被扶養者の位置付け、あるいは国保における擬制世帯の把握のしかたなどは、今日あらためて検討し直してみる必要がある。 他方、若者の置かれている状況は、ヨーロッパでも基本的に同様である。このような中、イギリスでは、当該問題の核心部分として「社会的排除」という点に着目し、これを克服するためのさまざまな取り組みや議論の蓄積がある。特に、権利と義務・責任の主体を「シティズンシップ」として把握し、若者を個人として捉えつつも、その社会的位置付けを重要視するアプローチは有効であると考えられ、この点からさらに日本の医療保障の論理と制度について検討を深める必要がある。
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