2003 Fiscal Year Annual Research Report
企業活動等から生じた法益侵害について個人が不作為の刑事責任を負う根拠及び限界
Project/Area Number |
15730033
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鎮目 征樹 筑波大学, 社会科学系, 講師 (10344855)
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Keywords | 不作為犯 / 作為義務 / プロバイダ |
Research Abstract |
今年度は,企業組織に属する個人の不作為に関して生ずる刑事責任の根拠及び限界について考察するための基礎理論的な研究を行なった。補助金は,主として上記の研究を遂行するために必要な文献・資料の購入費・複写費に当てられた。 1.第1に,不真正不作為犯における作為義務・保障人的地位という,本研究課題に取り組む上で,基礎的な部分となる問題に取り組んだ。すなわち,この問題と関連する諸文献(モノグラフィー・雑誌論文等)の収集・整理・分析を行なうことにより,近時,欧米諸国(とりわけドイツ)において展開されている議論状況について新たな知見を得た。さらに,不作為犯論と関連する諸理論(過失犯論・因果関係論・共犯論)が交錯する場面を巡って展開されている国内外の議論状況についても,整理・分析を試みた。 2.第2に,基礎理論を前提にしてなされている具体的諸問題-薬害・公務員の個人責任等についての考察も,関連諸文献を収集しつつ,これと併せて行なった。なお,ここでの検討の一部である,インターネット上のサーバに蔵置された違法コンテンツについてのプロバイダ(ISP)等の刑事責任については,なお試論の段階にとどまるものであるが,近時のわが国の議論状況を踏まえた上でその理論的な検討を試みた論考(「プロバイダ等の刑事責任」)を学術雑誌上に公表している。 以上の成果は,研究期間が終了するまでに一つの論文として取りまとめ,所属研究機関の紀要等で公表する予定である。そのために,来年度は,本年度に引き続き,作為義務についての基礎理論を中心に考察を加え,問題解決のための理論的視座を得ることを目標とする。その上で,薬害・公務員の個人責任等の具体的諸問題について,国内外の文献・判例を参照しつつ,理論的検討を加えていきたい。
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