2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730037
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
橋爪 隆 神戸大学, 法学研究科, 助教授 (70251436)
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Keywords | 経済刑法 / 倒産犯罪 / 破産犯罪 / 自力救済 / 債権回収と刑事法 / 執行妨害 / 違法性阻却 |
Research Abstract |
本年度は、平成15年度における倒産犯罪の基礎理論的な研究に引き続いて、平成16年に成立した改正破産法における破産犯罪処罰規定の内容について、具体的な検討を加えた。その知見としては、次のようなことを挙げることができる。 (1)「破産手続開始の決定の確定」を客観的処罰条件として存続させた新法の発想は、私的な財産整理の場面には刑事司法は介入しないという「私的自治」の政策判断として理解することができるが、債権者の利益保護という観点を強調するのであれば、客観的処罰条件を削除することにも十分な合理性があった。 (2)新破産法では詐欺破産罪(265条)の主観的要件として債権者加害目的が要求されているが、これは旧法が図利目的か加害目的のいずれかを要求していたのを改めたものである。経済的危機において、債権者が自己の利益のために財産を処分することは当然である以上、「債権者の利益を重大に危殆化する」行為を主観的・客観的な基準から選別するという観点からは、この改正はきわめて適切であったと考えることができる。 (3)破産管財人等に対する職務妨害罪(272条)などが設けられたことは、破産犯罪の一部を手続違反罪と把握する立場と対応する動きと評価することができる。改正法の解釈論の詳細については、さらに来年度、裁判実務等を分析しつつ、検討を続ける必要があろう。 さらに本年度は、「債権回収においてどの程度刑事法が介入するべきか」という問題関心から、自力救済(自救行為)の正当化根拠とその限界に関する検討に着手した。自救行為は、優越的利益を保護する典型的な場面の1つであり、しかも相手方の不正の行為を前提としているにもかかわらず、判例・通説はその成立をきわめて厳格に解している。このような立場がいかなる観点から正当化しうるのか、さらに検討を加えていきたい。
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