2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730039
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
豊崎 七絵 龍谷大学, 法学部, 助教授 (50282091)
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Keywords | 状況証拠 / 刑事事実認定 / 証拠法 / 総合評価 / 自由心証主義 / 事実観 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は以下の通りである。 (1)状況証拠しかなく、かつ、被告人側が無罪であるとして争っている具体的刑事事件に焦点を当て、その証拠の構成プロセスについて検討を行った。これは、近年かかるタイプの事件が顕在化しつつあると同時に、理論的にも注目されてきているものの、なお以下の点についての理論的検討が必要であると考えたからである。すなわち、実務においては裁判所の総合評価(自由心証)に委ねられた事実認定の手法が、有罪判決のみならず無罪判決においても採用されているという実態に照らし、(1)かような事実認定の手法が、証拠裁判主義(厳格な証明)、合理的疑いを容れない証明、そして「疑わしきは被告人の利益に」の原則といった採証法則との矛盾を来していないかという法的正当性の問題を理論的に考察し、かつ(2)かような事実認定の手法が採用される原因とその「論理」(正当化根拠)とを検討することである。以上の考察の成果については、豊崎七絵「状況証拠による事実認定と事実観」浜田寿美男=村井敏邦[編]『刑事司法と心理学の活用』(日本評論社、2005年)において公表する。 (2)第一審無罪判決の場合における控訴審での再勾留問題について、無罪判決の意義を考察するために、そして控訴審における心証形成の問題を考察するために、詳細な検討を行った。まず、無罪判決の意義に関しては、無罪判決言渡後も一定の嫌疑が残存するのか、それとも嫌疑は一切否定されたとみるのかが、再勾留問題をめぐる一つの重要な論点となるが、この問題は第一審における事実認定のあり方とも密接に関わっている。また、控訴審における心証形成の問題に関しては、第一審無罪判決の場合における検察官上訴において、控訴審自身が被告人に不利益な方向での心証形成を実態として行う場合があるとしても、法理論的にそれが許容され得るのかが検討されなければならない。この、無罪判決の意義と控訴審における心証形成の問題を考察することは、第一審ならびに控訴審における証拠の構成プロセスを如何に理論構成するかという点で、本研究の課題の一角をなすものである。以上の考察の成果については、豊崎七絵「第一審無罪判決の場合における、控訴審での再勾留の批判的検討--再勾留権限否定論の理論的根拠--」龍谷法学第37巻第3号30〜78頁(2004年12月)参照。
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