2003 Fiscal Year Annual Research Report
EU通貨統合下のヨーロッパにおける人的担保法制の研究
Project/Area Number |
15730040
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
遠藤 研一郎 岩手大学, 人文社会科学部, 助教授 (60322955)
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Keywords | ドイツにおける人的担保 / 保証 / 併存的債務引受 / 附従性 / 銀行損害担保 |
Research Abstract |
本年度は,主として,ドイツにおける人的担保法制に関する(1)歴史,(2)現代的意義・将来の課題についての調査・研究を行なった。 まず,(1)人的担保法制の歴史については,人的担保の典型である保証(Buergschaft)と,金融取引においても有効活用されている併存的債務引受制度(Schul dbeitritt)の峻別論について,ドイツおよび日本での文献調査を中心に,20世紀ドイツにおける判例・学説の変遷を調査した。その結果,(a)併存的債務引受概念は,BGB制定時における取引実務の「保証の方式強制」への懐疑心から,保証と対峙する概念として取り入れられるようになったこと,(b)しかし近時においては,両者をむしろ接合的に理解しようとする学説が有力に主張されていること,が明らかとなった。他方,(2)現代的意義・将来の課題の面で特に注目すべきは,ドイツでの実地調査等によって,特にクロスボーダー取引の局面では,銀行損害担保(Bankgarantie)が重要な役割を占めていることが浮き彫りとなったことである。銀行損害担保は,スタンドバイ信用状と類似の担保形態であるが,やはりスタンドバイ信用状と同様の問題(濫用があった場合の救済法理の確立の必要性)を抱えており,それに関して判例も蓄積されていることは興味深い。 なお,より大きな視点から,ドイツにおいて(上記の併存的債務引受や銀行損害担保に見られるように)「非附従的担保」が(わが国に比して)実務上有効活用されていることにも留意すべきである。ボーダレス取引が増加する将来において,わが国においても同担保形態は重要になってくるものと思われる。来年度以降の研究課題とする。
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Research Products
(1 results)