2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730043
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
田村 陽子 山形大学, 人文学部, 講師 (60344777)
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Keywords | 民事訴訟 / 証明度 / 証明責任 / 要件事実 / 優越的蓋然性 / 高度の蓋然性 / 裁判官の確信 / 証拠の優越 |
Research Abstract |
平成15年度は、研究計画に従い、第一に、証明主題たる要件事実論のあり方を、条文ごとの要件事実についての注釈書を参照しつつ検討した。そこでは、原則として、当事者間の証明責任の分配原則たる法律要件分類説の三分類(条文の形式)に従い、個々の条文における当事者間の公平等の利益も考慮して、要件事実が個々の条文で定められていた。すなわち、修正法律要件分類説による要件事実の決定がなされていた。これは、この科学研究費申請後の平成14年12月(裏面参照)に公表した拙稿の結論にも整合する結果となった。 この結果を踏まえ、第二に、具体的に証明をする際に必要な証明度について、アメリカおよびドイツにおける証明度論を参照した。アメリカでは、民事訴訟に必要な証明度は、「証拠の優越」(50%超)で足りるが、これは当事者間における敗訴や誤判の負担の公平の見地に基づくものであった。他方、ドイツでは、通説は「高度の蓋然性」(約80%以上)が必要だとするが、1960年代〜1980年代にスカンジナビア法学やアメリカ法学の影響を受けて証明度は「優越的蓋然性」(50%超)で足りるのではないかとの大論争があった。これらの50%超説は、いずれも「当事者間の公平」をその理論の根底においていた。ドイツの通説および日本の通説は、「高度の蓋然性」が民事訴訟における証明度として必要とするものであるが、いずれも「裁判官の確信」としての「真実性を担保するため」であった。 以上の検討結果より、優越的蓋然性説と高度の蓋然性説の差異は、むしろ証明度の主眼を「当事者」の公平に置くのか、「裁判官」の確信の真実性の担保に置くのか、といった対象の差異にあることが判明した。私見としては、民事訴訟においては当事者間の公平を第一に置くべきであるから、優越的蓋然性が妥当であると考えた。この結果は、次年度の研究の中で公表する予定である。
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