2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730096
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
若森 みどり 東京都立大学, 経済学部, 講師 (20347264)
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Keywords | 近代産業社会 / 公的扶助 / 勤労者社会 / カール・ポランニー / 市場経済 / 社会統合 / ゆたかな社会 / 消費 |
Research Abstract |
平成15年度は、19世紀末〜20世紀初頭の産業社会が直面した問題-自由貿易と金本位制による経済調整の行き詰まり、失業や倒産などの産業の不安定性、帝国主義と過少消費、厚生、産業合理化の問題-を、「道徳的な観点」から提示した経済・経営学説史研究に重点をおいた。これに対して平成16年度は、主に次の2点から研究に取り組んだ。 第1は、公的な扶助を受けることを「怠惰」とみなす、勤労者社会の形成とその揺らぎというストーリーを巧みに描いた『大転換』(初版1944年)の著者カール・ポランニーの産業社会思想の研究である。現在、『大転換』第2部「市場経済の勃興と凋落」の思想的な枠組みを構成するゴドウィン、マルサス、オウエンらの社会観を比較検討する作業を通じて、近代産業社会の形成期における社会秩序に関する論文を執筆中である。 第2は、産業化の成熟とともに形成された「消費する大衆」と「社会統合」の制度に関する研究である。本年度は、商品を欲望する大衆がどのように創出されたのかという点について検討する基礎作業として、広告文化やプロダクトデザイン、都市デザインに関する文献・資料を収集した。現在、近代産業社会当初において節倹という美徳が課せられていた「勤労者」大衆がいかにしてガルブレイスのいう20世紀の「ゆたかな社会affluent society」に統合されたのか、あるいは、「消費」というものが産業社会の新たな秩序形成にもたらした帰結について、考察を深めているところである。
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