2003 Fiscal Year Annual Research Report
ボリス・ブルツクスとソビエト体制形成過程の政治経済学
Project/Area Number |
15730098
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森岡 真史 立命館大学, 国際関係学部, 助教授 (50257812)
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Keywords | ブルツクス / ロシア革命 / 二月革命 / 社会主義 / ネップ / 土地共同体 / 農業改革 / ソビエト |
Research Abstract |
本年度は,ソビエト体制形成期におけるボリス・ブルツクスの活動のうち,特に(1)二月革命から十月革命直後の時期(1917年4月-12月),(2)ネップ開始後から国外追放までの時期(1921年12月-8月)について重点的に研究を行い,ロシアの国立図書館(モスクワ)および公共図書館(サンクト・ペテルブルク)での資料収集の成果をふまえつつ,次の点を明らかにした. 1.ブルツクスは1917年の二月革命後,自由経済協会等で土地改革のあり方について積極的に発現すると同時に,臨時政府の土地改革委員会に専門家として参加した.二月革命による民主化に伴って開放された民衆のエネルギーが想像ではなく破壊へと向かうことを危倶したブルツクスは,これらの活動を通じて,再分配の成果に過大な期待をよせる左派知識人の幻想を批判し,大土地所有の分割その他の諸改革は国民経済全体の資本的発展と両立可能な形で行われるべきであるという議論を展開したが,事態の流れを変えることはできなかった. 2.1921年春にネップが開始された後,ブルツクスは経済雑誌『エコノミスト』を創刊して社会主義経済の理論的批判を展開するとともに,1922年春に開催された第3回農学者大会での報告や,農業人民委員部の機関誌に発表した論文「農業制度と農業過剰人口」において,ネップのもとで始まった国民経済の復興をさらに促進し,農業過剰人口問題を解決するために農民に土地の私的所有権を与え,土地の自由な売買を認めるよう求めた.しかしこうした言論活動ゆえに,ブルツクスは8月に逮捕され,国外に追放される. 以上のうち,1922年の初期ネップ下のブルツクスの活動については,現在学会誌に投稿する論文を準備中であり(3月末完成予定),また二月革命期の活動についても,来年度の前半をめどに論文を執筆する予定である.
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