2003 Fiscal Year Annual Research Report
17-18世紀イギリスにおける金融システムの成立と「信頼」のシステム
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15730099
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Research Institution | Ohtsuki City College |
Principal Investigator |
伊藤 誠一郎 大月市立大月短期大学, 経済科, 助教授 (20255582)
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Keywords | 信用 / 担保 / 基金 / 土地銀行 / イングランド銀行 |
Research Abstract |
平成15年度前半は前年度までにおこなってきた予備的研究を英文で草稿にまとめ、日本在住のイギリス人による校閲のあと、これをカーディフ大学のパット・ハドソン教授に事前に送付し、9月のイギリス訪問時にカーディフ大学にて直接コメント、および関連情報を得た。また、その際ロンドンの大英図書館にて一次資料を閲覧し、それらのコピーを日本に持ち帰り、年度後半を主にこれらの資料の調査・検討にあてた。また、早稲田大学現代政治経済研究所に所蔵されているゴールドスミス・クレスライブラリー蔵書のマイクロフィルムも利用し、一次資料の収集にあたった。年度を通じてインターネット等をによって二次文献の収集もした。内容としては、前年度までにおこなった政治算術の研究の際注目してきた17世紀イングランドのあらゆる領域における不安定性、恐怖心、懐疑主義をまず時代背景として念頭におき、そのうえで本研究のテーマである名誉革命期の金融システムについての資料の検討をおこなった。かつてJ.K.ホースフィールドや杉山忠平によってとりあげられた名誉革命期の土地銀行設立案やイングランド銀行設立をめぐるパンフレット類が主たる対象となった。しかし、本研究においてはかつてのように貨幣供給量や近代的な金融システムの展開といったようないわば今日の経済学の視点からでなく、時代背景のなかでなぜ多くの銀行設立案が出され、そこでの争点はなんだったのかという点をさぐってきた。なかでも多くのパンフレッティーアが多用する'security'や'fund'という言葉に注目した。'fund'という言葉は十八世紀に入ると国債発行のための「基金」という意味でしばしば使われたが、少なくとも17世紀末のこの銀行論争においては'security'同様に、発行された紙券に対する「担保」をさしていた。そしてなによりもこの「担保」の信頼度がこの論争の争点であり、それは懐疑主義の時代の銀行にとってもっとも必要なものであったように思われる。貨幣供給等の経済理論的問題はこの論争においては必ずしも最重要の争点ではなかった。
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