2004 Fiscal Year Annual Research Report
17-18世紀イギリスにおける金融システムの成立と「信頼」のシステム
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15730099
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Research Institution | Ohtsuki City College |
Principal Investigator |
伊藤 誠一郎 大月市立大月短期大学, 経済科, 助教授 (20255582)
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Keywords | credit / charity / bank / England |
Research Abstract |
まず、平成15年度に収集した資料、そしてその調査にもとづきながらそれまでの研究をまとめ、The making of credit in England -1660-1690-というタイトルで、7月に慶應義塾大学経済学研究科の飯田・池田両教授の演習の中で報告した(英文。この際の英文校閲は明海大学のGarfield教授に依頼)。この報告では、おもに王政復古後から名誉革命あたりまでのあいだにイングランドで多く書かれた抵当銀行(lombard)設立案を、基金(fund)、質(pawn)、担保(security)、評判(reputation)といった用語に注目しながら初期近代における「信頼のシステム」としての金融システムの形成のプロセスを明らかにしようとした。 しかし、ここではこれらの議論がさらに王政復古より以前の、スチュァート朝前期、大空位期における信用(credit)をめぐる議論の延長線上にあり、そこにおける争点を解明する必要が感じられた。そのため、8月以降早稲田大学の現代政治経済研究所にあるGoldsmith-Kress Libraryコレクションのマイクロフィルムから、王政復古以前の関連文献の複写を行い、また8月末からの二週間のイギリス滞在では、大英図書館の手稿資料室(Manuscripts Room)で、関連する手稿類を昨年度購入したノート型パソコンに書き写した。年度後半はこれらの資料を調査し、平成17年度に学会報告をするための原稿作成にあたった。そこでは、王政復古にいたるまでの半世紀のあいだ、イングランドにおける金融関係のパンフレットにおける論争点は、貧民救済のための銀行(bank of charity)設立案と、質屋(pawn broker)への批判に集中した。その際、貧民救済という論点に重きが置かれながらも、そのためにこそ悪徳な質屋とはことなった、信頼できる貸し手が必要となった。また、そこにおける質(pawn)の扱いに関する議論が、王政復古後の多くの銀行設立案の論争点としてそのまま受け継がれていけることが判明した。
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