Research Abstract |
平成16年度は平成15年度の研究成果を踏まえて,以下のような研究を行った. (1)15年度収集したフェア・トレードの現状に関するデータを踏まえて,コーヒーに対象を絞って,より詳しい分析を行った.その結果,支配的な多国籍企業と多くの小規模生産者という市場構造や,認証制度の重要性,流通過程に関する日本と欧米諸国との相違点等が明らかになった. (2)15年度の理論分析を更に進め,様々な視点から分析を行った.まず,エコラベルの効果について,消費者の認知レベルの品質という要因を考慮することで意外な効果がいくつか見られることを明らかにした.また,企業環境主義に着目し,政府の貿易政策や環境政策との関係において,企業環境主義が社会厚生にとってプラスの場合とマイナスの場合がありうることを理論的に示した.さらに,森林等の再生可能資源に関する国際貿易において,相対的要素賦存量と所有権制度という2つの要因のうち,どのような条件下でどちらの要因が貿易パターンを決定するかを分析した.また,再生資源(リサイクル物質)の国際貿易に着目し,最終消費財に対する再生資源の含有量の基準や,グリーン購入法などの政策が持つ戦略的な効果について分析した.それらの政策は,再生資源の需要拡大を通じた廃棄物削減を本来の目的としているが,最終消費財や再生資源が貿易されている状況では,戦略的な目的から過度あるいは過小な基準を設ける誘因があることを理論的に明らかにした.これらの研究成果について,European Trade Study Group meeting 2004やHitotsubashi Conference on International Trade and FDI 2004等の国際コンファレンス,および日本経済学会2004年度春季大会・秋季大会等の国内学会において報告を行った.さらに,一橋大学のディスカッション・ペーパーとして成果をまとめるとともに,論文を査読付学術専門誌に投稿し,現在審査中である.
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