2003 Fiscal Year Annual Research Report
人口高齢化が企業の組織形態と技術選択に及ぼす影響に関する理論および実証分析
Project/Area Number |
15730142
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Research Institution | Kobe University of Commerce |
Principal Investigator |
橋本 浩幸 神戸商科大学, 商経学部, 助教授 (30295620)
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Keywords | 経済成長 / 企業組織 / 人口 / 経済政策 |
Research Abstract |
今年度の研究を通じて申請者が明らかにしたいことは、企業の組織形成のプロセスではなく、企業組織の形態がどのような経路を通じて経済成長に影響をもたらすのかということであった。そのために、主に契約理論の分野で分析される組織の最適な設計に関するモデルではなく、企業内の労働者の世代構成や労働者の質的相違-例えば、熟練度の相違-が長期の経済成長率に影響を与えるような理論モデルを構築した。具体的には、80年代後半以降マクロ経済学の主流になっている内生的経済成長理論の成果のうち、実証研究の分野でも重要視される人的資本と経済成長に関する研究成果を世代重複モデルに導入した。それにより、企業に異なる世代および異なる質の労働者が存在するモデルを構築できた。そして、外生ショックや経済政策が経済成長にどのような影響を与えるかということが、企業が異なる質や年齢の労働者をどのように組織するかということに依存することを示せた。興味深い結果が得られてはいるが、モデル細部の構造としては、企業内の組織選択のメカニズムがブラックボックスとなっているため、導出された命題から得られるインプリケーションやその直感的な説明が不明確となっている。少子高齢化で人口構成の変化が予見される中で、社会保障政策や教育政策など長期にわたりその効果を発揮するような経済政策に関する有用なインプリケーションを得ようとするためには、組織あるいは生産技術が選択される際の経営者-労働者間のインセンティブの構造を明らかにすることが必要となる。これらは来年度以降のもっとも大きな課題である。
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