2003 Fiscal Year Annual Research Report
サフォーク・システム研究〜アメリカ中央銀行制度の萌芽的な一形態
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15730150
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大森 拓磨 東京大学, 大学院・経済学研究科, 助手 (00334219)
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Keywords | サフォーク・システム / フリーバンキング / 中央銀行 / アメリカ金融制度 / 自由放任 / 最後の貸手 / 金融セイフティ・ネット / ニューイングランド |
Research Abstract |
平成15年度の研究計画は、「サフォーク・システム」の実態に関する一次資料および比較的古い時代に公刊されていた二次資料の収集、それに、フリーバンキング論や黎明期のアメリカ金融制度の理論・実証分析に関する洋書・和書の収集にあった。念願であったこれらの資料収集が一定程度実現できた。収集しえた諸資料をもとに、「サフォーク・システム」の実態に関する整理・分析を進めた。今年度の時点における分析の成果は以下の通りである。 すなわち、フリーバンキング論の擁護の有力な事例とされる「サフォーク・システム」について、「自由放任のもとで一民間銀行が自らの利己的な行動を通じて地域全体の信用秩序の安定化に貢献した」という内実ではなかった。それは、中央銀行なき時代のアメリカで、一民間銀行が私益を追求しながらも、景気循環を通じて生ずる経済の不安定性から地域の各銀行や金融市場を守るために、各地の各銀行から幅広く預金や準備を集めては各行を制御・指導したり、地域レベルでの「最後の貸手」として市場全体を調整したりするという、中央銀行的な機能を徐々に内生させていった、という内実であった。今年度の研究によって、「サフォーク・システム」はフリーバンキング批判ないし中央銀行論の見地から検討されるべきという主張の下地をほぼ固めることができた。 今年度の分析成果によって、「サフォーク・システム」が「民間銀行による中央銀行的な機能・組織の進化的な体得の過程」であることが浮き彫りにされたことで、本研究はアメリカ中央銀行制度史論の出発点に関するさらなる新たな意義を開拓することとなった。この点の丹念な論究は次年度の課題として進めてゆく。
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