2003 Fiscal Year Annual Research Report
教育財政システム改革の一環としての所得連動型教育ローンの導入の可能性に関する研究
Project/Area Number |
15730162
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
阪本 崇 京都橘女子大学, 文化政策学部, 講師 (20340458)
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Keywords | 所得連動型教育ローン / 教育財政 / 所得の平準化 / インセンティブ制度設計 / HECS |
Research Abstract |
本研究は、日本において所得連動型教育ローンを教育財政システムの一環として導入しうるか否かを問うものであり、その1年目とする15年度は、制度設計の上で留意する必要があるであろう所得連動型教育ローンの性質および問題点の整理が課題であった。この点について、以下のような新たな知見を得ることができた。 1.所得連動型教育ローンを導入する場合、その制度設計のあり方よりもむしろ、それを受け入れることができる社会的環境が整っているかどうかがクリティカルな条件となる。既に制度を導入しているオーストラリアでは、無料であった高等教育サービスを有料化することへの理解を求めることが重要であったが、日本においてはこの点はそれほど重要ではない。むしろ、一般会計から高等教育に補助金を出す場合に比較して高等教育の費用負担が明確となるので、高等教育を社会的に支えることに対するコンセンサスが得られる制度設計が必要である。(この点は、オーストラリア人の著名な研究者との意見交換によって得られた知見である) 2.所得連動型教育ローンを単独の制度として、労働・学習に対する負のインセンティブ問題への対処や、社会保障制度などとの統合を検討したが、こうした方法をとることには限界がある。所得連動型教育ローンは、個人の人生設計の根本に関わる制度であるため、所得税論の中でも重要な位置を占める所得の平準化と統合した形で制度設計を検討する必要がある。 3.上記の2点に留意して制度設計を行う場合、貨幣ベースおよび効用ベースでみた所得分配への影響を検討することが不可欠であるが、これについてはK.J.Arrow,"A Utilitarian Approach to the Concept of Equality in Public Expenditure",1971などで展開された方法によって可能であることが確認された。
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