Research Abstract |
本年度は,企業の社会戦略(CSR戦略)について,類型化したものをもとに,各類型について事例研究を実施した.CSRの戦略的遂行,戦略的フィランソロピー,社会的事業,NPO設立といった方法について,二次資料の収集に加えて,学会や各種会議,フォーラムへの参加,関係企業や団体へのインタビュー調査などを中心に事例を収集して,文献研究と併行しながら分析を行っている. また企業とNPOに関しては,アンケート調査を実施して,関係構築の現状,関係構築の障害,ネットワーク型フィランソロピーの実態について把握して,分析途中にある. 上記の研究を進めることで,以下の点について解明し,また新たな課題を導出している. CSRやCSR戦略を考察していく上では,その対象範囲が企業活動全体に及び,広範であるため,さまざまな角度から対象と方法を絞って枠組みを考える必要がある.現段階においては,CSRをめぐる社会からの2つの要求(マイナスを及ぼさない,よりプラスの効果を生み出す)は高まる一方であり,企業側はCSRに対する戦略的な取り組みを模索している. そのような中で,CSR戦略にも創造と学習,独自性,先駆性が求められる一方で,企業や事業の本質を再考した取り組み,当たり前の地道な努力を継続させる工夫(マネジメント・システムに組み入れる,従業員への浸透)が課題になっている.またCSRの取り組みを競争優位に結びつけていく上では,強い組織アイデンティティの構築,長期戦略に位置づけたCSRへの取り組みが不可欠になっている.さらに,本質的なCSRを考える上では,事業や業界のとらえ方から再考する必要がある.本研究の今後の課題として,CSRとステークホルダー・マネジメントの組織体制や組織プロセスについても,さらに検討していく必要がある.
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