2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本企業における労働安全の確保にかかわるコストの管理について
Project/Area Number |
15730219
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
岡本 直之 愛媛大学, 法文学部, 助教授 (60273562)
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Keywords | 労働安全衛生 / 品質原価計算 / PAF分類 |
Research Abstract |
本年度は、品質コスト・マネジメントにおけるPAF分類について、その構造的類似性に依拠して、これを労働安全衛生マネジメント・システムに適用する可能性を検討した。具体的には、「予防コスト」「評価コスト」「失敗コスト」というPAF分類が労働安全の問題にも応用できる部分と応用できない部分とを検討した。 まず、労働安全に関する予防、評価、失敗の各コスト間の関連性について、短絡的に相互依存関係を見いだすことはできない。すなわち、予防・評価コストを増減させた結果として失敗コストがどのように変動するかについて、明示的、短期的に関係を示しながら各コストの最小化を志向することは困難である。 それとともに、予防、評価および失敗コストを合計した、いわばトータルの労働安全衛生コストを最小化することに取り組むことも問題を含んでいるといえる。予防・評価コストを過度に減少させたとしても、失敗コストとして表出するまでにタイムラグがある。予防・評価を怠ることが明示的・短期的に失敗として現れるわけではないのである。そのため、原価管理の対象として短期的な、トータルの労働安全衛生コストに焦点をあてれば、コスト削減の対象は当然にして予防・評価コストに向かう。 このように、労働安全衛生コストに対して品質原価計算のPAF分類を援用することは、明快な回答を提供するものではない。それは品質コスト・マネジメントが品質管理活動の費用対効果を「検討」する枠組みを提供するにすぎないのと同様である。しかし、品質コスト概念における、予防活動の強化によって品質不良を減らし、そのことが結果として評価コスト・予防コストを低減させるというポジティブな、いわば長期的なサイクルを回転させるという考え方を、労働安全衛生の分野において援用することが可能である。長期の視野に立つPAFアプローチを生かすことを今後の検討課題としたい。
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