2004 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ商法会計・監査制度の新動向とその評価-EUの国際会計基準採用決定を受けて-
Project/Area Number |
15730226
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
三原 園子 関東学院大学, 法学部, 助教授 (90290030)
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Keywords | 正規の簿記の諸原則 / 経済監査士 / 簿外資産・簿外負債 / IAS / ドイツ商法典 / 企業改革法 / 監査委員会 / 会計監査人の独立性 |
Research Abstract |
ドイツ商法典上の正規の簿記の原則の解釈をめぐって、従来からこれを慣習法と捉える伝統的な帰納的思考法とこれを法規範と捉える演繹的思考法とに大きく分かれていたところ、後者は連邦財政裁判所の基礎となったものの、連邦最高裁判所が帰納的思考法を採用してこれが通説的見解となっている。演繹的思考法は、ドイツ商法典の公法的・強行法的性質と一致し、ドイツ商法典の利害調整機能を具体化した債権者保護につながるとされる。 会計監査人の独立性について、監査法人の形態としてLLPが採られるアメリカでは2000年からSECが監査人の独立性について厳格な基準を設けている一方、ドイツでは監査法人の形態は、株式会社または有限会社であり、大会社の監査を行う経済監査士または中小会社の監査を行う宣誓監査人がその株主または社員となる形が多く採用されており、独立性が十分確保されないと批判される。2002年の企業改革法も、合衆国すべての証券取引所およびNASDAQが監査委員会の構成員の独立性、監査と助言の区分を含む一定の基準を厳格に要求しこれを満たさない会社を登録禁止とする規則を採用するようSECに指示するほか、ブルーリボン委員会の勧告も監査委員会の独立性を要求している。但し、財務諸表上の計上については、アメリカのエンロン破綻で問題となった簿外資産および簿外負債を国際財務報告基準、日本およびアメリカにおいて一定の場合に簿外にすべきと規定するのと異なり、ドイツ商法典上はその計上を禁止し、イギリス会社法においても原則禁止とする。ドイツの財務諸表上、税法上と商法上の勘定科目が直結している。 2005年1月からのEUのIAS導入後のドイツ企業の財務諸表利用状況を調査するため、ドイツの教授に協力依頼を行って承諾を得たほか、対象企業および質問事項の試案を練った。 これまでおよび今後の成果を次年度に数回に分けて論文として報告する予定である。
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