2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730239
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鶴巻 泉子 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 助教授 (70345841)
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Keywords | 国境 / フランス地域 / アルザス / 越境労働者(「フロンタリエ」) |
Research Abstract |
本年度の研究課題はとくにアルザス地方側から見た国境をめぐる人の流れの変化、そして国境に関する表象の変化についての考察であった。 1,6-7月にかけて文献整理と調査準備を行った。7月25日-9月3日に行った現地調査では、地方自治体や文化団体、地域メディアでの聞き取りと、特にアルザス地方の越境労働者(「フロンタリエ」)に関して、公共機関が把握する統計資料収集と、研究文献収集に努めた。また越境労働者の地域性をより明確に把握するため他地域における越境労働者、特に近隣地域であるロレーヌ地方やリールなど北部地域の資料・関連論文収集にも力を入れた。これら資料の分析の結果、特に経済領域に関しての国境地域間交流の深まりが見られること、そして近年まで越境労働者を多く生み出してきた国境沿いの市町村に限らず、そこから離れた中規模都市にまで越境労働が広がっていることなどが確認された。 2,他方、人の流れの物理的変化は実際に人々の表象の仕方の変化とどう対応しているかを考えることも今年度の課題であった。諸処の事情により地域メディアのバックナンバーを,網羅的に収集することができなかったため、代わりに断片的に集められた文献の分析を9-3月にかけて行った。その結果、地域メディアに見る限り、アルザスに於いて国境近隣地域への社会的・文化的関心は(経済領域に比べ)大きな変化を見せていない、ということが確認された。 3,また今年度のもう一つの柱はグローバリゼーションに関する文献整理、中でも従来マイノリティ・ナショナリズムと捉えられてきた現象との関係を把握することであった。この点については、一年間にわたって特にフランスで出版された文献を英米との研究とつき合わせることに努力した。フランスにおける議論の特殊性が地域における国境の捉え方に影響を与えているのではないかという問題が、次年度以降更に検討すべき課題として残された。
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