2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730239
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鶴巻 泉子 名古屋大学, 大学院・国際言語文化研究科, 助教授 (70345841)
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Keywords | 国境地域 / EU結合 / アルザス |
Research Abstract |
1.本年度研究の主眼点:本年度の研究目的はドイツ・スイス側での制度的統計(地方自治体・公機関)の収集とアルザス側でのより深い質的調査に基づいて、国境を挟んだ行き来の変化を国境両側からつき合わせて比較検討する、というものだった。 2.資料収集と調査内容:アルザス側では北部の三都市とストラスブール、ドイツ側ではカールスルーエでの調査を行った(アルザス側での調査に時間を取られ、スイスでは十分な資料収集ができなかった)。アルザス・ドイツ側の国境移動に関しては、特に「(1)越境通勤者(フロンタリエ)」数の急増と多業種化、(2)観光客数の安定化と増加、(3)住宅地や別荘の(国境向こう側での)購入増加などが確認されると共に、それぞれが実は一方向の流れになっていること((1)についてはアルザス側からのみ、(2)、(3)についてはドイツ側から)が分かり、人的流れの「非対称性」が明らかとなった。インタビューでは、とくに国境をめぐる表象の変化を問題とし、国境都市市議や独仏交流センター長などに話を聞いた。ここで明らかとなったのは両国の「旧敵国」に対する意識のずれ、そしてアルザス側では公的な言説と実際の交流現実の矛盾であった。例えばドイツ側と日常的な教育交流をしていたアルザス側のある都市では、仏独関係がEU統合の文脈の中で制度化するにつれ逆に交流形態を制限せざるを得ない状況になった。 3.分析の中心点:現在進行中の分析の中心は、数字で見る両国からの「移動の非対称性」と、「相手側についての意識のずれ」がどのように説明できるかを検討することにある。アルザスを分析の基盤に置き、その「向こう側」についての表象が「旧敵国」・「EU統合パートナー」・「地理的・日常領域パートナー」の三次元にカテゴライズできることを確認した上で、それに数字的裏付け・地域文脈から見た説明を与える作業を現在も続けている。
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