2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730247
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
丸山 真純 長崎大学, 経済学部, 助教授 (00304923)
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Keywords | 異文化 / 近代性 / 認知形式 / 視覚 |
Research Abstract |
本年度は、異文化を研究するという営為と密接にかかわりのある、「物事(文化を含めて)を正確に観察する(そして、記述する)」という研究者(観察主体)の認知形式(客観的認知)が歴史的にどのように形成されてきたのかを中心に文献調査を行った。この正確に観察するという認知形式は遠近法の展開と密接に関わっており、主体(観察者)と客体(観察対象)の明確な分離、視覚の優位性、均質な空間認知、均質な時間認知、数量化などを特徴とする。こうした認知形式は近代とそれ以前の時代(そこでの認知形式は主体と客体が未分化で、両者が密接に情緒的に結びついている)を明確に分かち、近年のグローバル化に伴い、広く受容されている。とりわけ、本年度はこの近代の認知様式を視覚の優位性と直線的時間意識の観点から考察した。その成果の一つとして、近代性と直線的時間意識の関わりを論文にした(Human Communication Studies,32に掲載予定)。来年度は、このような世界認知形式と近代性についてのより全般的考察を論文にまとめ、来年度中に学会で発表し、学会誌に投稿する予定である。 この文献調査に加えて、いくつかの関連する学会やシンポジウム、研究会に参加し、実際に研究者が(異)文化をどのように語り、表象するかについて観察・考察する機会を持った。特に刺激を受けたのは、異文化間教育学会特定課題研究である『異文化間教育と「日本人性」』であった。本研究の問題意識は、ある民族(文化集団)を均質な主体として、あるいは自明なものとして分析単位とする研究者の認知形式やそれを基にした研究・教育実践のあり方から生じたものであり、内なる他者の問題や米国のホワイトネス研究の成果を知ることができ、本研究に大きな示唆を与えた。 来年度は、近代の認知形式とそれによって生産される知と権力の問題、さらにその再生産について、考察を進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)