2004 Fiscal Year Annual Research Report
人生の危機を乗り越える「心理学的強さ」についての研究
Project/Area Number |
15730291
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
天貝 由美子 千葉大学, 教育学部, 助教授 (00314443)
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Keywords | 心理学的強さ / (人生の)危機 |
Research Abstract |
「心理学的強さ」を測定する質問項目を作成し、平成16年度の日本教育心理学会において発表した。その際、「心理学的強さ」を、本人の主観的な意識の程度からのみ判断するのではなく、"(のちに)自分で成長できたという実感(自己成長感)の持てた、人生の危機を乗り越えた経験"を中心としてとらえるよう、修正を行った。アンケート調査の分析により明らかになった主な点は、以下の通りである;1.人生の危機(本人にとってのつらい体験)の内容によって、それに影響を及ぼす「心理学的強さ」の側面が異なった。具体的には、タイムリミットがある出来事(e.g.受験)や、主に自分自身や将来に関するつらさや不安等については、「自分と向き合う」ことが大きく影響していた。一方で、人間関係でのトラブルや喪失体験等には、「物事に立ち向かわない」こと(「物事に立ち向かう」ことのなさ)が影響を及ぼしていた。2.人生の危機の内容によらず、乗り越えるきっかけがあった(意識できた)人の方が、肯定的自己成長を感じていた。 現在、人生の危機の内容毎に、「心理学的強さ」がどのような形で有効に働くのかを、試案も含め、分析・検討している(その一部について学会発表を行う予定である;平成17年度日本教育心理学会)。 また、オーストラリア、マックワイアリ大学および併設の不安クリニックにおいて、「心理学的強さ」について、専門家との意見交換を行った。同クリニックで実践されている認知療法を基盤とした心理援助について、説明を受け、実際行われた面接の陪席をした。ここから得られた知見について(「心理学的強さ」の発達を、認知的枠組みの変化としてとらえる際の課題等)、執筆を始めている(平成17年度千葉大学教育学部研究紀要に投稿予定)。
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