2004 Fiscal Year Annual Research Report
非行・犯罪者の自己統制能力形成過程と家庭環境-両親からのしつけの内在化とモデリングの観点から-
Project/Area Number |
15730313
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河野 荘子 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 助教授 (00313924)
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Keywords | 自己統制能力 / 親の養育態度 / 受刑者 / 養育環境 |
Research Abstract |
平成16年度は、両親の心理的不在が子どもの自己統制能力にどのような影響を及ぼすのかを、質問紙を用いて調査し、重回帰分析で、受刑者と一般社会人との比較検討を行った。 本研究の対象は、受刑者(拘置所に入所中の男性28名、平均年齢40.4歳)と一般社会人(成人男性69名、平均年齢39.2歳)である。一般社会人群は、全員が10年以上、特定の仕事を継続させている。それぞれの群に対して、低自己統制能力を測る24項目(平成15年度と同じ内容のもの)、養育環境の質を測定する8項目を実施した。養育環境に関する項目は、森下(1998)が、「養育ストラテジー」の概念を用いて作成した質問紙の一部を、本研究の被験者に合うように改変して使用した。その内容は、被験者の両親それぞれの拒否的統制的養育態度を測定するものとなっている。どちらに関する項目も、合計得点が高いほど、その傾向が強いことを示す。 その結果、 1.群を問わず、父親の拒否的統制的養育態度は、その子どもの自己統制能力を低くする。 2.母親の拒否的統制的養育態度は、受刑者群の自己中心性を低める傾向にある。 となった。これらの結果は、今回の被験者が男性であることを考えると、男性にとっての父親の重要性を改めて示すものといえるだろう。また、母親の養育態度は、父親の影響を受けた自己統制能力を軌道修正する役割があることが推測された。 今回、継続して一定の職務を全うできている一般社会人群のほうが、受刑者群よりも高い自己統制能力を示すものと考えていたが、統計上でそれを確認することはできなかった。また、被験者数の問題もあり、共分散構造分析によるモデルの構築にまでは至らなかった。今後の検討課題といえる。
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