2003 Fiscal Year Annual Research Report
視覚的注意の抑制メカニズムにおける適応的機能性の解明
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15730330
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 淳一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (10343104)
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Keywords | 視覚的注意 / 抑制機能 / 負のプライミング / 上位概念干渉 / 高次視覚 |
Research Abstract |
視覚的注意の機能の一つに,行動の目的から見て必要ではない情報(ディストラクター)の処理を抑制する働きがある。この抑制機能は,ディストラクターによって行動が干渉されることを防ぐメカニズムであると考えられる。本研究では,実験心理学的手法を通じて抑制機能の適応的なメカニズムを解明することを目的とし,本年度は「負のプライミング」と「上位概念干渉」の二つの実験パラダイムを用いて検討を行った。 負のプライミングに関する研究では,文字の同定判断課題でディストラクターのサイズを変化させた実験を行った結果,ディストラクターによる干渉はサイズの変化に関わらず生じたのに対して,負のプライミングはディストラクターのサイズが小さい(文字として認識しにくい)条件で減少するという傾向が観察された。この結果から,ディストラクターによる干渉が刺激の諸属性(輝度・形状など)のレベルで生ずるのに対して,ディストラクターに対する抑制は行動目的に直接関わりのある属性のレベル(この場合は文字表象レベル)においてのみ生ずることが示唆された。他方,上位概念干渉に関する研究では,物体の系列的同定課題において,同じ上位概念カテゴリに属するディストラクター物体をターゲット物体の直前に提示したとき,その物体の典型性が高いほど強い概念的抑制が生ずることが示唆された。 以上の実験研究に並行して,視覚的注意の適応的機能性について文献研究を行い,特に刺激の親近性・新奇性と視覚的注意の関係に着目して展望論文を執筆・発表した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Nagai, J., Yokosawa, K.: "Negative priming and stimulus familiarity : What causes opposite results?"Memory & Cognition. 31(3). 369-379 (2003)
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[Publications] 永井 淳一: "刺激の親近性・新奇生と祖覚的注意"心理学評論. 46(3). 412-425 (2003)
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[Publications] Nagai, J., Yokosawa, K.: "Superordinate interference in basic level object recognition : The effects of object typicality"Journal of Vision. 3(9). 271a (2003)