2003 Fiscal Year Annual Research Report
家畜豚における道具的学習事態の開発と基礎的認知・学習能力に関する研究
Project/Area Number |
15730332
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
谷内 通 金沢大学, 文学部, 講師 (40324058)
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Keywords | ブタ / オペラント条件づけ / 自由オペラント / 離散オペラント / 反応形成 / 消去 / 採餌方略 / シャトリング |
Research Abstract |
ブタにおいてオペラント条件づけを検討するための実験事態の開発を行った。まず,自由オペラントと呼ばれるレバー押しによる報酬の獲得事態において,産業的な飼育条件における給餌量に制限を加えない条件下でも報酬性の学習が可能であるか検討した。その結果,産業的な飼育条件における給餌量に制限を加えない場合にも,午前の給餌前に実験セッションを行うことにより,報酬訓練が可能であることが確認された。3.4gの固形餌を報酬,2秒間のホロホロブザーを条件性強化子として,逐次接近法によるレバー押しの形成が,約40分,約90強化で成立した。連続強化下では約10反応/分程度のラットを上回る反応率が得られた。また,急速な消去と非常に弱い自発的回復を確認した。また,報酬獲得に要する運動コストを節約するための「餌のため込み後の採餌」という霊長類にのみ確認されてきた反応方略をブタが示すことを発見した。 一方,視覚弁別等の検討には,離散オペラントと呼ばれる学習事態を用いて,反応毎に刺激パネル等の操作子から動物を離れさせることが必要である。しかし,従来の研究では,体重200kgを超える成ブタを自在に移動させる技術がないために,ミニブタや子ブタを使用せざるを得なかった。本研究では,逐次接近法により,試行毎に刺激パネル(操作子)への反応後に,豚房の反対の壁にある別の操作子へ反応させることを求める"シャトリング"行動を形成可能であることを確認した。 このように,これまでの検討により,自由オペラントと離散オペラントという基本的な道具的学習事態の両方をブタにおいて確立することに成功した。今後,これらの事態を利用して,複雑な強化スケジュールの効果や各種視覚弁別課題について検討する予定である。
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