2003 Fiscal Year Annual Research Report
発語過程において有声・無声が影響を及ぼすしくみと処理のレベル:音韻・音声・調音
Project/Area Number |
15730345
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
呉田 陽一 (財)東京都高齢者研究・福祉振興財団, 東京都老人総合研究所・言語・認知・脳機能研究グループ, 研究員 (60321874)
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Keywords | 言語心理学 / 音韻 / 音声 |
Research Abstract |
これまで研究者は、日本語話者の単語の音韻化レベルにはモーラ単位(子音+母音)のユニットが必要であることを明らかにした。この事実は、欧米言語話者が音素単位で音韻的符合化できる結果とは極めて対照的である。例えば、欧米言語話者が/t//e//n//t/と発話する場合、語頭の音素/t/のプライムが促進効果をもたらすのに対し、日本語話者は/t/だけでは効果がなく、母音を付加した/te/ではじめて効果が現れる。これまでの実験ではプライムされる語頭の音素は無声子音(たとえば、/s/,/t/,/k/など)が中心であった。本年度は有声子音(たとえば、/m/,/n/,/r/など)を使ってその効果を再検討した。 被験者には、本実験に先立って決められた手がかりに対応する単語を対連合学習してもらった。そして、実験条件のブロックでは語頭に同じ子音をもつ単語を、統制条件のブロックでは語頭に音韻的重複のない単語を、繰り返し発話してもらった。その結果、プライミング効果は現れなかった。ところが、音素レベルの音韻を強く意識させる手続きを導入したところ、促進効果が認められた。これまで対連合学習では漢字やカナ文字で刺激を提示したが、これをローマ字表記に改めて提示した結果である。しかし、今回用いられた刺激は有声子音だけだったので、この効果が、有声・無声を問わず子音全般に生起するものなのか、さらなる検討が必要であろう。
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