2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15740018
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
稲場 道明 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助手 (80359934)
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Keywords | モジュライ / 導来圏 |
Research Abstract |
連接層の導来圏の対象のモジュライ空間は,代数空間として実現されることはわかっているが,射影多様体としてのモジュライ空間の存在がわかっているものとしては,安定層のモジュライ空間やそれをフーリエ・向井変換で移して得られるモジュライ空間などがある。今年の研究ではそれらの射影多様体としてのモジュライ空間の実現されている対象の集まりの満たす性質として共通のものを拾い出すという作業を行い,その結果,一般の三角圏の中で偏極と安定性の条件を定義し,安定な対象のモジュライ空間が準射影スキームとして存在する形にできた。しかし,ここにおける定義は射影多様体としてモジュライ空間が存在するために作為的にこしらえたものという印象が強く,もう少し納得がいくように条件の精密化と意味のある具体例を見つける努力をこれからする必要がある。 今年度実際に成果があがったのは,パンルベ方程式の幾何に関する齋藤政彦氏と岩崎克則氏との共同研究である。この研究では射影直線上で4点の確定特異点をもつ正則接続を持つ階数2の放物ベクトル束のモジュライ空間を考え,それが丁度パンルベ第六方程式の初期値空間と一致していることを示している。ここで特徴的なのは,モジュライ空間のコンパクト化も同時に構成し,初期値空間のコンパクト化である岡本・パンルベ対を復元したことである。リーマン・ヒルベルト対応により,この接続のモジュライ空間から,射影直線から4点を抜いた空間の基本群の表現のモジュライ空間への解析写像が定まり,この写像を介して,モノドロミー保存変形によってパンルベ第六方程式が復元されている。このリーマン・ヒルベルト対応から定まる写像は代数的な写像ではないが,丁度表現のモジュライ空間の解析的同時特異点解消を与えていることがわかり,リーマン・ヒルベルト対応のモジュライ理論的な幾何学的実現を初めて与えたと言えると思う。
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[Publications] M.Inaba, K.Iwasaki, H.-H.Saito: "Backlund Transformations of the Sixth Painlere Equation in Terms of Riemann-Hilbert Correspondence"International Mathematics Research Notices. 2004・1. 1-30 (2004)
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[Publications] M.Inaba: "On the moduli of stable sheaves on some nonreduced projective schemes"Journal of Algebraic Geometry. 13・1. 1-27 (2004)
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[Publications] M.Inaba: "Toward a definition of moduli of complexes of coherent sheaves on a projective scheme"Journal of Mathematics of Kyoto University. 42・2. 317-329 (2002)