Research Abstract |
当該課題の主要な研究対象である,トーリック環,トーリックイデアルについて研究した。 2002年,ReinerとWelkerは,有限分配束に付随する凸多面体のトーリック環がGorenstein環ならば,そのh列はある単体的凸多面体のh列と一致する,従って,単峰数列であることを示した。2003年,Christos Athanasiadisはspecial simplexという概念を導入し,「compressed(すなわち,任意の逆辞書式三角形分割が単模)な整凸多面体にspecial simplexが存在するならば,そのトーリック環のh列はある単体的凸多面体のh列と一致する」という定理を証明し,魔方陣のh列に関するStanleyの予想を肯定的に解決した。与えられた凸多面体の頂点を頂点集合とする単体が,special simplexであるとは,元の凸多面体の任意のファセットが,その単体の頂点集合を,1頂点を除いて全て含むときにいう。本年度の研究では,有限グラフに付随する辺凸多面体と安定凸多面体を研究し,それらのspecial simplexについて研究した。特に,奇サイクル条件(グラフの共有点を持たない任意の2つの奇サイクルは辺でつながっている)等を満たすグラフに対して,対応するトーリック環がGorensteinならば,辺凸多面体にspecial simplexが存在することを示した。(なお,グラフが奇サイクル条件を満たすことは,トーリック環が正規であることと同値である。)また,安定凸多面体については,perfectグラフに付随するトーリック環がGorensteinならば,凸多面体にはspecial simplexが存在することを証明した。いずれの場合も,更に,辺凸多面体がcompressedならば,h列は単峰数列である。
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