2004 Fiscal Year Annual Research Report
概均質ベクトル空間のゼータ関数と例外群に付随する級数、および多重ゼータ値の研究
Project/Area Number |
15740025
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
大野 泰生 近畿大学, 理工学部, 講師 (70330230)
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Keywords | 概均質ベクトル空間 / ゼータ関数 / 2元3次形式 / 多重ゼータ値 / ベルヌーイ数 / ベルヌーイ多項式 |
Research Abstract |
多重ゼータ値のなす有理数体上の代数の構造、とりわけ各weight(重さ)ごとの多重ゼータ値の張る有理数体上のベクトル空間の次元・構造について研究を進めた。各weightのベクトル空間のレベルでは、次元の上限についてTerasomaやGoncharovの成果が知られているものの、各空間での基底の選び方や関係式の全体像の把握については、まだまだ未解明な点が多い。この中で、特にオイラーが多重ゼータ値研究を開始した当時からの問題意識でもある、リーマンゼータ関数の特殊値によって張られる部分空間の特定、言い換えるとリーマンゼータ値によって表示される多重ゼータ値の有理数係数線形結合の把握の観点で、著しい結果を得た。この結果は、オイラーの定義した多重ゼータ値について、ある種の巡回置換の作用に基づいて類別を定義し、各類に族する多重ゼータ値の和がリーマンゼータ値と等しくなるようにできるというものである。これは、約10年前から多重ゼータ値のなす環構造を解明する上で最も重要な関係式族のひとつとして知られている、多重ゼータ値の和公式を均等に細分化(精密化)したものであり、等式は極めて平均的で単純である。このリーマンゼータ値による多重ゼータ値和の表記については、近畿大学の青木貴史教授との年来の共同研究も行っており、それらの成果は順調に進展していると言える。この方向での多重ゼータ値研究にも興味を強くもつDon Zagier教授(ドイツ・ボンのマックスプランク研究所長、フランス・パリのコレージュドフランス教授、オランダ、ユトレヒト大学教授)のもとに平成17年3月初旬から2週間あまり滞在し、6年前から続く共同研究を行った。そして、すでにZagier教授との共著論文としてオランダ数学会誌に発表済みの結果の、2変数ゼータ値についての拡張にあたる結果を部分的に得た。また同時に、2元3次形式のゼータ関数については、これも6年前から続く共同研究において、例外群に付随する保型形式との関連に焦点を絞っての研究を進めてきたが、数値的であるが一定の進展を得た。更に、マックスプランク研究所の客員研究員であるH.Gangl氏、B.Moroz氏と、ゼータ関数の特殊値や基本群のガロア作用についての討議の機会を得、また同時期にマックスプランク研究所を訪問滞在していた、G.Racinet氏とも議論の機会をもち、多重ポリログの観点からの和公式の対称性の解釈について、相互理解を深めることができた。これらの研究連絡ならびに大いなる共同研究進展は、本科学研究費による支援なくしては実現不可能であった。非常に有意義な成果と更なる研究進展への動機付けを得ることができた。上記進展についての論文3本は現在、2本が投稿中、1本が執筆中である。また、多重ゼータ値の最新の研究成果交換の場として京都大学数理解析研究所で短期共同研究(11月8〜11日)を主催した。
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