Research Abstract |
ラプラシアンの固有値の特異摂動問題について考察する.Ω⊂R^2を有界単連結領域とし,γ:[0,T]→R^2を∂Ω上の2点を結ぶ,Ω内の自己交差の無い滑らかな曲線とする.曲線γは弧長でパラメータ付けされているとする.ε∈[0,T]に対し,L(ε)を∂Ω上でDirichlet境界条件,亀裂γ((ε,T))上でNeumann境界条件に従うL^2(Ω)上の(-Δ)とする(ただしΔは2次元ラプラシアン).j∈Nに対し,λ_j(ε)をL(ε)の多重度を込めてj番目の固有値とする.λ_j(ε)はεの単調非減少関数である.Ω\γ((0,T))の2つの連結成分をΩ_+,Ω_-とおく.点{γ(0)}が∂Ω_+の次数α(1<α<∞)の尖点(interior cusp)である場合に,固有値λ_j(ε)のε→+0とするときの漸近挙動を精密に解析することが本研究の目的である.γ(0)=0とし,∂Ω_+\γ((0,T))とγ((0,T))は原点の近傍でそれぞれx_2=x^α_1とx_2=0で表されると仮定する.L^±をL^2(Ω_±)上の(-Δ)で,∂Ω_±∩∂Ω上でDirichlet境界条件,γ((0,L))上でNeumann境界条件に従うものとする.L_+,L_-の第1固有値をそれぞれλ^+_1,λ^-_1とおく.λ^+_1<λ^-_1の場合に,次の評価を得た:ある正の定数C_1が存在して,すべてのε∈(0,T)に対して, λ_1(ε)-λ^+_1【less than or equal】C_1 exp(-πε^<1-α>/(α-1)) が成り立つ.また,亀裂がx_2軸内の線分で,Ωが亀裂に対して対称である場合に次の評価を得た:ある正の定数C_1,C_2が存在して,すべてのε∈(0,T)に対して, C_2 exp(-πε^<1-α>/(α-1))【less than or equal】λ_2(ε)-λ^+_2【less than or equal】C_1 exp(-πε^<1-α>/(α-1)) が成り立つ.
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