2005 Fiscal Year Annual Research Report
広視野観測によって明かす宇宙の階層的構造形成史と星形成史
Project/Area Number |
15740126
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
児玉 忠恭 国立天文台, 光赤外研究部, 助教授 (80343101)
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Keywords | 銀河形成 / 銀河進化 / 銀河団 / 宇宙大規模構造 |
Research Abstract |
本研究は、我が国のすばる望遠鏡のユニークな特長である広視野カメラを主に利用して、遠方宇宙の観測を系統的に行い、宇宙の構造とそれを構成する銀河の特性を、時間と環境との関数として詳細に比較することによって、宇宙が誕生してから今日の階層的銀河宇宙が形成されてくるまでの過程(特に構造形成と銀河進化)を実証的に明らかにすることを目標とした(PISCESプロジェクト)。本年は当課題の最終年度であった。10月に3晩、チリのNTT望遠鏡にて、すばるで見つかり既に分光確認されているz=0.83にある銀河団周辺の大規模構造に沿って、近赤外線の広視野撮像観測を行った。目的は銀河を構成する星質量関数を求めることで、データは現在解析中であるが、星質量が十分成長を遂げている兆候をつかんでいる。このように本研究で推進してきたPISCESプロジェクトは、これまでに8つの銀河団について撮像観測を終え、銀河団が大規模構造に沿って銀河を膠着させながら成長してゆく様と、その中で銀河の特性、特に星形成率が環境によって影響を受けながら成長して行く様を描き出すことに成功した。さらに、重力レンズ効果を利用し、銀河団の背景にz=3.9の遠方銀河も発見した。これらの結果は、今年度、計4本の査読論文に発表した。一方、PISCESプロジェクトをより遠方の宇宙に発展させるため、すばるの近赤外線撮像観測(CISCOとMOIRCS)によって、超遠方(z〜2以上)のクエーサーの周辺領域の探査を引き続いて行っている。9月の観測では有力な原始銀河団候補を新たに2つ発見すると共に、これらのデータをスピッツァー望遠鏡の結果と比較し、銀河質量の進化の解析をz=2.5で展開中である。また、1月にはCISCOに比べて視野7倍も広いMOIRCSを用いて、さらに遠方(z〜3)の原始銀河団候補領域(これまでの輝線銀河サーベイで同定されていたもの)の近赤外線マッピングを行ない、電波銀河の周りに輝線銀河の分布に沿うようにして赤い進化した銀河も密度超過していることが明らかになった。この結果は銀河団の形成時期が非常に早いことを示唆し、銀河形成上重要である。
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Research Products
(6 results)