2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15740165
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藏増 嘉伸 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 講師 (30280506)
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Keywords | 量子色力学(QCD) / 格子QCD / ボトムクォーク / B中間子 / ハドロン行列要素 |
Research Abstract |
格子QCDを用いて弱い相互作用における重いハドロン(チャーム、ボトムクォークを含むハドロン)の行列要素を精度良く計算することは非常に重要であるが、重いクォークを格子上で扱う場合はそれ固有の困難がある。問題は、現在の計算機性能では格子QCDのカットオフ、即ち格子間隔の逆数(1/a)は重いクォークの質量(m_Q)より小さく取らざる得ないことである。例えば、現在の数値計算においてはボトムクォークの質量(m_b)とカットオフの比はおよそ1から3程度である。この大きなカットオフ効果をコントロールするために幾つかのアイデアが提案されているが、その殆どは非相対論的QCDのようにm_Q>>1/aという仮定に基づいている。この場合、カットオフの大きさは重いクォークの質量よりも小さくなければならないので、ハドロン行列要素の連続極限を考えることは原理的に出来ない。このことは、第一原理に基づいた計算という格子QCDの本質的な利点を放棄しており、格子上における重いクォークの定式化として満足できるものではない。 青木慎他、冨永信一との共同研究のもと、我々はカットオフがm_Qと同程度の大きさである場合における格子上の重いクォークの相対論的定式化を提唱した。基本的なアイデアとしては、重いクォーク作用にa*m_Qに依存するパラメーターを人為的に導入し、それによってクォーク質量によるカットオフ効果を取り除くというものである。 我々は先ず、1次の摂動計算によってこのパラメーターおよび双線形演算子の繰り込み因子を決定し、それらを用いてクェンチ近似の範囲内で様々な物理量に対するカットオフ効果を系統的に調べた。結果は期待を大きく上回るものであり、次のステップとして現在動的クォークの効果を正しく取り入れた計算を行っている。我々の相対論的定式化によって、重いクォークを含んだ物理量の連続極限を考えることが可能となり、これによって現在広く行われている非相対論的近似を超えた計算が実現できる。
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Research Products
(2 results)