2003 Fiscal Year Annual Research Report
セリウムシリコン薄膜単結晶成長と高分解能角度分解光電子分光によるバンド分散の研究
Project/Area Number |
15740186
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
三村 功次郎 大阪府立大学, 工学研究科, 助手 (40305652)
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Keywords | 反射高速電子線回折 / 共鳴光電子分光 / 正弦波変調磁気構造 / スピン揺らぎ |
Research Abstract |
本研究の目的は、CeSi薄膜単結晶を成長し、in situでの温度可変角度分解光電子分光実験によりバンド構造の詳細な研究を行うことで、CeSiのもつ特殊な磁気構造の起源を明らかにすることにある。この目的を達するため、本年度は以下のことを行った。 薄膜単結晶試料の成長においては、結晶表面の配位方向を決定することが重要である。そのため本年度は、反射高速電子線回折(RHEED)装置を購入し、真空槽への組み込みを行った。さらに、CeSi薄膜単結晶成長用の基板ホルダの設計・製作を行った。このホルダはin situでの光電子分光装置への試料の搬送を可能にするだけでなく、基板に対して直接通電加熱が出来るよう工夫が施されている。このホルダに対してSi(111)基板を組み込み1250℃に加熱することで、Si(111)-7×7のRHEEDパターンを観測することが出来た。今後はこの基板上へのCeSi薄膜単結晶の成長を試みたい。 上記と並行して、既存のCeSiバルク試料に対して試料温度200-5.6Kの範囲でCe 4d-4f共鳴光電子分光実験を行った。その結果、フェルミ準位近傍のCe4f^1_<5/2>終状態による構造の強度は、200Kから30Kまで温度を下げるにつれて増加し、30Kを境に5.6Kまで下降させると逆に減少していくことが明らかになった。CeSiにおける特異な磁気構造(正弦波変調磁気構造)は、これまでの物性測定からスピン揺らぎに端を発するものと期待されている。さらに電気抵抗率の測定などから、スピン揺らぎは30K以下で生じていると考えられる。以上の事から、共鳴光電子スペクトルの温度依存性は磁気秩序の形成に伴うCe4f電子状態の変化を観測したものと考えられる。この結果は本年夏に開催される真空紫外線物理国際会議(VUV 14)にて発表を行う予定である。
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