2003 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体におけるスピンと電荷のナノスケール相分離に関する研究
Project/Area Number |
15740194
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木村 宏之 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (50312658)
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Keywords | 高温超伝導 / 電荷ストライプ秩序 / 競合・共存状態 / 放射光X線回折 |
Research Abstract |
本年度は,電荷ストライプ秩序が存在すると強く信じられているLa_<2-x-y>Ba_ySr_xCuO_4(LBSCO)超伝導体について,4種類のSr濃度について,ほぼ同程度の形状・大きさの試料を用いて放射光X線回折実験を行った.また,この実験に用いたものと同一の試料を用いて超伝導転移温度T_cを測定した.得られた結果は以下の通りである. 1)電荷ストライプ秩序は,結晶構造相転移とともに出現すると信じられていたが,今回の高精度実験の結果,構造相転移温度T_<d2>よりも高温から,短距離秩序として現れていることが分かった. 2)電荷ストライプ秩序は,T_<d2>が消える組成で突如として消失する.一方,ストライプ秩序を競合する高温超伝導は,ストライプ秩序状態でも存在することが分かった.これは,電荷秩序と超伝導が本質的に共存する可能性を示す重要な結果である. 3)電荷ストライプ秩序によって出現する超格子反射を100点以上観測することに成功した.今後は,得られた強度を定量的に解析し,電荷秩序に伴う原子変位パターンと,その変位量の絶対値を求める予定である.この解析により,ストライプ上にどの程度の電荷が局在しているかが明らかにできると考えている.
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