2004 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属化合物における共鳴X線分光の第一原理計算に基づく理論解析
Project/Area Number |
15740196
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高橋 学 群馬大学, 工学部, 助教授 (50250816)
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Keywords | クロム / スピン密度波 / 共鳴X線散乱 / X線磁気散乱 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
局所密度汎関数近似にもとづいた第一原理バンド計算を用いて、スピン密度波をともなった反強磁性状態をとるクロムのCr K-吸収端共鳴散乱および非共鳴磁気散乱の散乱振幅の解析を行った。この計算では、結晶構造は実験的に知られている格子定数の理想的な体心立方格子を、スピン密度波の波長はスピンフリップ温度付近での値を仮定した。これらの仮定の範囲でバンド計算を行いスピン密度波をともなった反強磁性状態を計算機上で再現することに成功した。得られたスピン密度波をともなった反強磁性状態はこれまでに計算されたものと矛盾しないものであるが、我々はCrの軌道磁気モーメントについて新しい知見を得ることができた。それは、これまで信じられてきたように基底状態のクロムは軌道磁気モーメントを持たない(観測にかからないほど小さい)のであるが、磁気量子数毎の部分状態密度のエネルギー依存性の観点でみると3d軌道が軌道磁気的に著しく分極しているということである。そしてこのことが、X線散乱の実験事実を矛盾なく説明する鍵であることを示すことができた。 すなわち、部分状態密度の積分量に磁気量子数を乗じて和をとったものが3d軌道磁気モーメントになるのだけれども、その和がたまたまゼロになるような位置にフェルミレベルが存在するために、3d軌道モーメントが非共鳴磁気散乱では観測できないくらいに小さくなっている。一方、3d軌道の軌道磁気的な分極自身は立派に存在しており、分極のエネルギー依存性はニッケルやコバルトなどの他の典型的な遷移金属と同程度に激しい。この3d軌道の軌道磁気的な分極と4p軌道が混成することにより4p軌道が軌道磁気的に分極し、そのエネルギー依存性を共鳴X線散乱が捕らえているのである。以上のことを計算機上の実験としてスピン・軌道相互作用を部分的に入れたり切ったりすることで明確に示すことに成功した。
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Research Products
(2 results)