2004 Fiscal Year Annual Research Report
パルス強磁場中マイクロ計測技術を用いた磁束相転移の研究
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15740199
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大道 英二 東京大学, 物性研究所, 助手 (00323634)
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Keywords | カンチレバー / 磁束相転移 / 侵入長測定 / パルス強磁場 |
Research Abstract |
平成16年度は、近年発見された高温超伝導体MgB_2の超伝導状態ならびに磁束状態について調べた。この物質は、高い超伝導転移温度を持つことから新たな超伝導線材としての応用が期待されるとともにマルチギャップ超伝導という新奇な超伝導体として興味が持たれている。しかしながら、高い臨界磁場と大型単結晶育成が困難なことから、これまで強磁場域での測定が不可能であった。そこで平成15年度に開発したマイクロ計測による高感度測定装置を用いて、初めて低温・強磁場領域までその磁束相転移について調べた。 (1)マイクロカンチレバーを用いた炭素置換MgB_2における不可逆磁場増大の観測 超伝導体応用を考える上で磁束のピンニングを反映した不可逆磁場の測定は最も基本的な測定の一つである。マイクロカンチレバーによる高感度トルク測定を炭素置換MgB_2単結晶に適用することで、不可逆磁場の変化を調べた。その結果、炭素置換とともに超伝導転移温度は単調減少するが、不可逆磁場が約5%置換した試料で最大値を持ち、約33Tまで上昇することがわかった。この値は置換していない試料の値の約2倍にあたり、炭素原子の不純物効果として説明できることを示した。また、上部臨界磁場の異方性から、炭素置換してもマルチギャップ超伝導は消失しないことを示した。 (2)トンネルダイオード型侵入長測定による磁束秩序-無秩序転移の観測 MgB_2は、磁束相図の観点からは従来型超伝導体と高温超伝導体の中間に位置する物質であり、その振る舞いは興味深い。炭素置換した試料の測定を行うことで磁束格子に対する不純物効果を系統的に調べることが可能になる。本研究で開発したトンネルダイオード型侵入長測定装置を用いることで、磁束秩序-無秩序転移について詳細に調べた。その結果、炭素濃度を増大していくに従い、磁束転移線が低磁場側にシフトしていく振る舞いが観測された。これらの振る舞いは、ギンツブルグ数をパラメータとした理論を用いて、定量的に説明することができた。また、その結果から、MgB_2は磁束格子に対する揺らぎの効果が比較的小さい系としてみなせることがわかった。
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Research Products
(5 results)